役所の「たらいまわし」について

よく「役所に行ったらあちこちたらいまわしにされた」という話を聞くことがあります。〇〇について聞こうと思ったら、××課へ行けと言われ、××課へ行ったら△△課へ行くように言われた、というようなことです。結局〇〇課でよかったのにという話もよく聞きます。

私も役所に勤めていましたから、役所の肩を持つわけではないのですが、この例の場合、希望する内容をしっかりと伝えていなかったのではないかなぁという場合があります。おそらく「え?その話って保険に関することだったんですか?DVっておっしゃるのでDVの相談かと思ったんですが」

DVの相談は多岐に渡ります。家から避難したいとなると、保険はどうする、住民票はどうなる、子どもの転校はどうする、子どもの心のケアも考えたい、生活費も心細いし住居のあてもないなどなど盛りだくさんです。

利用者側の立場から言えば一か所で済ませたい内容なのですが、なにせお役所は縦割りですので、それぞれの部署に本人が出向いて全部のところでイチから事情を話さなければなりません。

被害者の方にその手間と精神的苦痛をさせないようにとできたのが「ワンストップサービス」です。ある役所では最初に被害状況を聞き取り、それを文書化しそれを持ってあちこち回ればいいように工夫したところもあります。

実のところこれもちょっと問題があって、書いてあるといっても口頭での説明もやっぱり必要で、「え?文書に夫はいつも帰りが遅くと書いてあるけど単身赴任なのですか?」「あ、そうです。それは以前の時で」などの勘違い、聞き違いが結構発生します。

中には○○課と××課で話した内容が全然違うということも発生します。

#被害者も混乱して思考能力が落ちていますから、そうキチキチとはできない場合もありますよね

私が一番いいなぁと思っているのは、モラハラ被害者同盟で行っている「避難応援プロジェクト」のような、オープンダイヤログ形式です。その部門の担当者が被害者と一同に介し、質問ーそれに対する答えーそれに付随する他課からの提案ーさらに弁護士からの法的支援など、一被害者に対する支援がそこでまるっと収まってしまう形式です。

ただ、これが実現しないのは

#役所はあまりにも忙しすぎて、ひとりにかけられる時間を捻出できません。

それをするとなると、担当者は係長以上の責任ある人が回答しなくてはならず、といって係長よりも非常勤のDV担当者の方が事情には詳しくとなり、それぞれの部署から2人×課の数となり、その人たちのスケジュールを合わせるとなると至難の技、そして被害者はひとりではない。大勢いる。

ということで、なかなかこの形式は実現は難しそうなのですが、もしやっているところがありましたら教えて下さい。

もうひとつ、たらいまわしが行われるのは理由があります。たとえばDV相談員に児童手当について聞こうとします。DV相談員は児童手当の仕組みもある程度の額も知っています。でもそこで「〇円程度もらえます」とは言えません。

制度仕組みというのは常に動きますし、その方がそれをもらえる資格があるかどうかもわかりません。本人が「年収は100万円程度です」と言っても、それが本当かどうかわかりません。だから担当課へ行って自分で聞いてもらうことになります。

私自身まったくDVと関係のない課の人が、ちょっと本を読んだり調べたりした程度の知識で「DVってね」と話されるのは迷惑です。やめていただきたい。とっととこちらへ案内して欲しいと思っています。

餅は餅屋。餅のことは餅屋に聞け。チョコレート屋に餅のことはわからないのです。

さて、この避難応援プロジェクトはコロナの非常事態宣言のため今年度は実施することができませんでしたが、やっと始動を始めました。11月、2月に行う予定で現在計画を詰めています。もしご希望の方がいらっしゃいましたら、こちらまでご連絡ください。詳細をお知らせします。