奇妙な「家族団らん写生会」

私が小学4年の頃。父親は月に数回酒を飲んでわめき散らす、母親はそのストレスをまともに子どもにぶつける。家は貧乏、学校へ行けばお金持ち大好きの教員から嫌われるという生活でした。

ある日曜日の朝、突然母が「家族団らんをしよう!」と言い出しました。

今思うと笑えてしまうのですが、家族団らんとは取り立てて始めるイベントではなく、日々が楽しく暮らせていればそれが家族団らんというものではないでしょうか。母が「家族団らんをしよう!」言った瞬間に私は「けっ!」と思いました。小学4年生です。

10歳でもこんな大人の幼稚な取り繕いに気づき、「けっ!」と思う頭は持っています。今10歳以上のお子さんをお持ちの方は子どもは幼いからわからないだろう、気づかないだろう、子どもなんだからと思っていても、子どもは大人が思っているより頭のつくりは大人です。

毎度毎度酒を飲んでわめきちらし、母は子どもに決して言ってはいけないことを叫びちらし、ナニが家族団らんじゃい、笑わせるんじゃねぇと思っていました。

母が思いついた「家族団らんイベント」は写生会でした。こたつの上に花を挿した花瓶を置き、それを4人で写生するというものでした。

母は必死で家族仲良い風景を作りたいと思っていたでしょう。がんばって家族らしいことを「お金をかけずに」やりたいと思っていたでしょう。そのがんばりがミエミエな分、私の頭の中には「浅はか」という文字が浮かびました。

#そんなわざとらしいことをするよりも、子どもたちに毒吐きするな

モラハラ被害者の方の中には「子どもが自分の辛さをわかってくれない」「私の味方をして、一緒に夫の悪口を言って」という方はいますが、これはやめた方がいいでしょう。結婚は夫婦で決めたことで、子どもには関係ないことです。子どもには楽しくのびのびと暮らす権利があります。その権利を守るのは親の役目です。

さて、写生会は終わり、ご丁寧にそれぞれの作品を見せ合いながらの寸評になりました。「お母さんのここがいい」「早智子は色がきれい」などと家族団らんごっこをしてお開きになりました。ありがたいことにこの家族団らん写生会はこれ一度だけで、二度と開かれることはありませんでした。