村上春樹ー「ハナレイ・ベイ」

村上春樹は読書の好きな方なら当然のように読んでいるでしょうが、私は小説よりもノンフィクションなどのジャンルが好きなもので、手にとる機会がありませんでした。超ベストセラー「ノルウェイの森」もしかり。「1Q84」はDVを扱った小説だと聞き、読んでみようかと図書館に行くと、1巻が薄汚れていているのに比べ、3巻はそれほどでもない。司書をしていた同僚に聞いたら「みんな途中で挫折するから、3巻までたどりつかないのよ」と。

そうか、みんな挫折するのか。だったら当然私も挫折するであろうといまだに手にとっていません。時間ができたら読もうと思っている本のリストに入れておく、と。

長編は無理でも短編ならと図書館で手にとったのが「東京奇譚集」でした。「ハナレイ・ベイ」はその中のひとつです。他のものはみんな忘れてしまったのですが、これだけは強烈な印象がありました。

と思ったら、世の人みんながそう思ったのか、映画化されていました。

https://sheage.jp/article/41007

このお話に惹かれたのは、主人公のシングルマザー、サチは自分の子どもが嫌いだったということ。自分で育てたわけだから、いくばくかは自分にも責任があるとはいえ、息子の生き方、人格がとても好きにはなれないこと。

その息子がハワイの「ハナレイ・ベイ」でサメに襲われ、片足を食いちぎられて亡くなってしまいます。そんな息子の幽霊が出ると聞き、彼女は命日の度にハナレイ・ベイにやってくるのですが、自分には見えません。なぜ他の人には見えるのに、自分には見えないのか。

なぜ、嫌いな息子の亡霊が見たいのか。

じれったいほどに死んだ息子に会いたい母親。大嫌いだったのに会いたい母親。

私も母親のひとりですから、この気持ちがすごくよくわかって、忘れられないお話になりました。短編ですのですぐに読めます。よろしければどうぞ。