受験は親も子も狂います

以前この記事を書きました。

この時期恒例の受験ネタです。

昨年秋、道で元同僚にばったり会いました。なんとなく立ち話をしていたら、「娘が中学受験。成績が低迷し、思春期も重なって大荒れで手がつけられない」と心底困っているよう。彼女、子どもが生まれたときは「うちは公立一本だから。私立なんか考えてないから」と言い切っていたので、「子どもが希望する場合もあるわよ」と言ったのですが、「うちみたいに低収入(本当は高収入)な家は無理。絶対に受けさせない」。

子どもはこう育てるんだ、こうするんだとかなり理想の子育てをしていましたが、どうやら思いと実際は違ったようで。

#育児書どおりに育ったら、こんなに育児書が流行るわけない。みんな思った通りにできないから本に飛びつく

一応アドバイスをして、「受験は親も子も狂うのよ」と言ったら、道の真ん中で身もだえし、「狂いますよねーーー、狂いますよねーーー、そうなんだーーー、みんな狂うんだーーーー!!」と大絶叫しました。

#相当まいっていたみたい

私も通った道だから本当によくわかる。あの時期は自分はどうかしていたと思うほど、試験に落ちたらどうしようかと、そればかり考えていました。地方は高校名で一生が決まるというほど高校が大事。高校名を告げたら就職は門前払い、交際していた相手から結婚をお断りされ、結婚するとあからさまに相手の家から蔑まされ話の中にも入れてもらえない。「お正月は私だけキッチンで料理の上げ下げしてるのよ」と聞いたことがあります。高校名を偽って結婚した人もいます。

この差別をまともに受けるのは女性よりも男性の方が大きく、それゆえ受験に熱心なのは母よりも父の方が強かったりします。社会の中で高校名で差別されるのがどれほど辛いことか、身をもって知っているからです。

これくらいのあからさまな差別のある高校名。高校受験は一発勝負。地方は公高私低。公立高校受験に落ちたら辛い人生が待っていると思うと、正気の状態ではいられません。そのため、中学浪人をする人がとても多いという現実があります。この話を東京でしたら「中学浪人なんて考えられない」とびっくりされました。私の頃は裕福な家は公立高校に落ちたら、他県の私立高校に進学する人もいました。

埼玉でこの話をしたら、「埼玉もそうですよー。あからさまですよー」と言われました。首都圏の埼玉でもそうなのか。うちの子と同期の子の母親で精神科に入院した人がふたりいました。

高校で一生が決まるわけではないというのは事情を知らない人の言うこと。一生が決まることもあります。

「後からなぜあの時あんなに思いつめたんだろうって思うんだけどね」と彼女に言うと、泣きながらうんうんと頷いて、「やっぱり同じ経験をした人の話は説得力がありますー。同じ思いをしないとこの気持ちはわかってもらえませんもん」

「子どもの力を信じて」「これで一生が決まるわけじゃない」と聞いたようなことを言われても、狂った親や子には届かないのです。