飛ぶ教室

私が一番本を読んだのはたぶん小学生の頃だと思います。とにかくいつも本を読んでいましたが、家は貧乏なので本を買ってもらうことはできず、学校の図書館から借りて読んでいました。というわけで、図書貸し出し数は常にナンバーワンでした。

愛読書はいろいろありますが、お気に入りのひとつがエーリッヒ・ケストナーの「飛ぶ教室」。第一次大戦後のドイツの男子寄宿舎を舞台に、少年たちが起こす出来事の物語です。

#「ドイツ」「男子寄宿舎」「ギムナジウム」とくれば「萩尾望都」「ポーの一族」「トーマの心臓」と連想が続くお年頃。とはいえ、私はあまりこの方面には夢中になれなかった部類です。好きな人はものすごく好きみたいですけどねー。

さて、この寄宿舎は裕福な子が通う学校なのですが、マルティン・ターラーは家が貧乏で奨学金を受けて学んでいます。

クリスマスの前、友人たちが家に帰るんだとはしゃいでいる時、マルティンに届いた母からの手紙に入っていたのは旅費には足りない金額の切手。

#お金を送るときは切手で送ったんですね、当時は。

「お前が家に帰るための旅費を工面することができなかったの。この切手でチョコレートを買って飲みなさい」と手紙に書いてありました。

#はて、チョコレートを「飲む」とは???

チョコレートとは食べるものなのに、飲むチョコレートとはいかなるものなのか。小学生の頃、すごーく想像力をかきたてられました。

みんなが帰省してがらんとした寄宿舎の中で、「泣くこと厳禁、泣くこと厳禁」と唱えながら枕に顔をうずめるマルティンに、舎監の正義先生の温かな手が差し伸べられました。

もー、めっちゃいいじゃないですかー。書いていながら泣けてくる。たぶん自分の家が貧乏で、他の子と同じようにはできないことを重ね合わせたのかもしれません。

クリスマスと聞けば、私はこの「飛ぶ教室」や「若草物語」を連想します。

この本の前書きに、こんな言葉があります。

人生、何を悲しむかではなく、どれぐらい深く悲しむかが重要なのだ。誓ってもいいが、子どもの涙は大人の涙より小さいということはない。大人の涙より重いことだってある

クリスマスの今宵、世界中の子どもたちが幸せでありますように