子どもが小学生だった頃。少子化がどんどん進み、上の子が入学した時はまだ10人以上いた子ども会が、最終的には我が家のふたりだけになってしまいました。そこに実家に帰ってきた方の子が入り3人に。うちの子ふたりだけだったら夏休み恒例の子ども会ラジオ体操もやらなくて済んだのですが、3人になってしまったからにはやらざるを得ず。しかたなく我が家の隣の空き地でラジカセ持ってラジオ体操をしていました。
そこへもうひとり、お父さんの転勤で引っ越してきたユリエちゃんという1年生の女の子が入ってきました。これで4人。ユリエちゃんの家は子どもの足だと10分以上はかかる場所にあり、弟さんがまだ小さいのでお母さんではなくお父さんがついてきて、イクメンぶりっ子の元夫も入り、結構にぎやかな朝になりました。
夏休みには子ども会でイベントをするのが決まりで、親同志が和気あいあいならば海に連れて行ったりバーベキューしたりするのですが、まったく交流のない親たちなので、私が車で映画に連れて行くことになりました。
4人を連れ「千と千尋の神隠し」を上映中の映画館へ。「夏休みドラえもん祭り」などはよく連れていきましたが、ジブリはいつもレンタルビデオばかりだったような気がする。
子どもたちはお菓子を食べながら、食い入るようにスクリーンを見ています。「千と千尋の神隠し」は、私もジブリ作品の中では好きな映画です。台湾の九份が油屋のモデルになったと聞き、行ってみたりもしました。
映画が終わり、最初はよそよそしかった子どもたちも少し慣れてきたところで、お昼ご飯はマクドナルドにしました。そこのマックは子どもが遊ぶ場所があるので、よく連れて行きました。
それぞれ注文したバーガーをたべ終えると、子どもたちは遊び場で汗びっしょりになって遊び始めました。朝何も口をきかなかったユリエちゃんも、きゃっきゃと笑い声をあげながら遊んでいます。「ユリエ!こっち来いよーー!」というお兄ちゃんの声に「うん!」と言いながら走っていきます。
これだからここのマックはいいのよね。親が楽できる。
たんまり遊んだ後、車でユリエちゃんを家まで送り、みんなでバイバイしました。
そして夏休みの間中毎日ラジオ体操をして、体操が終わるとユリエちゃんはお父さんと一緒に「お兄ちゃん、またねー!」と言って帰っていきました。
ユリエちゃんのお母さんが我が家に来たのはもう夏休みが残り少なくなった日。
「急に転勤が決まったんです。仲良くしてくださってありがとうございました」と言ってあいさつに来られました。
お父さんは転勤が多い職業だから仕方がないとは言え、ひと夏だけとは短かすぎる。
「ユリエちゃん、引っ越したんだって」
子どもに言うと「え?」と言ったまま何が起こったかわからない様子のお兄ちゃん。
翌日、ユリエちゃんがいないラジオ体操が終わった後、ユリエちゃんの家の方をずっと見ていました。
先日「コクリコ坂」を初めてみました。映画は見たことがありませんでしたが、テーマ曲の「さよならの夏」が好きでよく聞いています。
たったひと夏しかいなかったユリエちゃん。お父さんが転勤するたびにたくさんのさよならがあったでしょう。でも、1年生の夏休みに4人しか子どもがいないラジオ体操があったこと、「千と千尋の神隠し」をお兄ちゃんたちと一緒に見たこと、覚えていてくれるかな。