岸辺のアルバム2

1977年のリアルタイム放送を私は見ていません。なぜなら私の住む県ではTBSが流れないからです。でもあの最終回「アルバムを持ち出さなきゃ!」というシーンは何度となく見たことがあります。たぶん「思い出のドラマ」のような番組で見たのでしょう。

この古いテレビドラマは今の世の中、便利なことにYouTubeに全編あるので、見ることができています(長いドラマの途中まで見た。「愛の不時着」待ってろよ!)。

1977年(昭和52年)の制作ですからもう43年前!のドラマです。打っていて私もびっくりしました。もう遠い昔の日本が舞台で、風景は昔のものなのに、お話はそれほど古くありません。それにもビックリしました。貞淑な妻が家庭のある男性と不倫し、優等生の外人大好き女子大生の姉はその外人から性被害に遭いと、あの43年前のお茶の間に、こんなドラマを出して大丈夫だったんかい!?というくらい過激です。

#ああ、この路線から金妻に継承されるのねと思った。

家族の世話だけのために生きている妻と、そんな母を軽蔑する女子大生の姉と言うのは、今日でも生きている構図。この軸は43年経った今もそう変わりません。確かに外に働きに出る妻たちは多くなりましたが、それは「フヨウノハンイナイ」という、ひとりでは生きていけない収入のもの。月額8万円程度の、税金や社会保険料を払わないで済む社会システムの中のものです。

いつも夫や子どもの食事や洗濯物の世話だけなんてつまらないじゃない。ちょっと他の男性とおしゃべりするくらい、いいじゃないのという自己欺瞞からズブズブと深みにはまっていく妻(母)。それを知ってもリベラルな姉は「男の人と会うくらいの権利はお母さんにだってあるわよ」と言います。一番健気なのは、家庭を壊すまいと、不倫に走る母を必死で止めようとする高校三年生の息子です。

ね?これ43年前のドラマですよ。妻の不倫相手は誠実実直そうな家庭持ちのイケメン(竹脇無我はまり役)。信じられないのは妻の年齢設定が39歳だということ。どう見ても八千草薫扮する妻は50代の落ち着きがある。それを言ったら大学に毎日高価そうなスーツやワンピースをとっかえひっかえ通う姉が19歳というのも、どう見てもこの子たち大学生だろうという、息子やその友だちは高校生というのも、今の同年代の子たちと比べてずいぶんと大人びています。

今の年齢は昔の7がけ(今20歳ならば×0.7で昔の14歳)というのはホントだなと思いました。。

まだ全部を見ていないのですが、最終的には「家は多摩川の堤防が決壊して流されてしまったけれど、家族はまたやり直そう」ということで終わるのでしょう。

知人が多摩川の川べりにマンションを買い、お招き下さったので見に行きましたが、本当に川べりのマンションの真ん前は土手で、その向こうには川が流れていました。多摩川が特徴的なのは、その河川敷がとても広くて、サッカー場や野球場やゴルフ練習場に使われていたりするところです。

川にはいくつもの橋がかけられ、窓からは行きかう電車が見え、それはまるで「岸辺のアルバム」のプロローグシーンのようです。ジャニス・イアンが歌う主題歌「Will you dance?」はとてもヒットした曲でした。

Will you dance, will you dance?
take a chance on romance
and a big surprise?
Will you dance, will you dance?
Take a chance on romance
and a big surprise?

dance chance romanceという、韻を踏んだ音がとても印象深く、あの頃を生きた人たちは、この曲を聞くと「岸辺のアルバム」を即連想するようです。見たことのない私でさえ。
そう言えばジャニス・イアンの曲のことを今年ここで書いたんだっけ。

この頃はまだコロナウィルスが本格化しておらず、どこかの国のお話しのように書いてますね。まさかこんな世界になると思ってもみませんでした。梅雨の雨が終わっても、台風の時期になり、また豪雨なるのでしょう。今年の多摩川はどうなるのか。知人の家の窓から見た多摩川が河川敷を覆い、「岸辺のアルバム」のようなことにならないよう、祈るばかりです。