NHKハートネットTV「精神的DV特集」を見て

10月9日、10日の2日間にわたってNHK教育テレビ「ハートネットTV 特集 精神的DV」で精神的DVの放送がありました。

この番組のディレクターさんから取材依頼のご連絡をいただいたのが7月中旬。私の本(家庭モラルハラスメント)を読んでくださってのご連絡でした。まだ若い男性の方にどれだけわかっていただけたかわかりませんが、ご連絡をいただけたということはそれなりに響くものがあったのかもしれません。

その頃はまだ放送が決まっておらず、まずいろいろ取材してからというお話でした。私以外にも被害者の方数名のお話を聞いていただき、その方々は今回の放送にも登場されました。

担当者の方のご意向としては今回の放送は「モラハラ」ではなく「精神的DV」として放送したいとのことでした。モラハラは法的には「精神的DV」のカテゴリに入りますので、それはそれでテレビ局側の判断ということだと思います。

「モラハラ」だろうが「精神的DV」だろうが受けているものは変わらず、また、この頃モラハラが気軽に使われるようになり、「は?」のようなものも「モラハラだ!」と人の口にのぼるようになってしまい、釈然としない思いが募っているところへこのお話です。

だったら原点に帰って「精神的DV」でもいいんじゃないかと思いながらの伴走でした。

いつもモラハラというと情報番組なのですが、番組のつくりはドキュメンタリータッチで、新鮮な気持ちで見ることができました。1回目の小西聖子先生、2回目の信田さよ子さんはさずがのオーラでした。信田さんの「違和感って正しいんですよ」は本当に説得力がありました。

私も含めた被害者の多くは「結婚する前に違和感を感じた」と言います。違和感はあるのだけれど、「もう両親にも紹介したし、結婚式場も予約したし、職場にも伝えてあるし、友人からお祝いももらったし」と、後に引けない状態の中で突っ走ってしまった。

結婚したら辛い現実があったけれど、「子どもができたら彼も変わるんじゃないか」と子どもを産んでみたらさらにひどくなり、子どもにも影響がでるようになった。

第1回で小西先生が「人間苦痛がある時は自責感を感じるんですよ。それは大人も子どもも同じ。大人は『私が悪いから夫から叱られるんだ』と思い、子どもは『自分が悪い子だからパパは怒るんだ』『子どもの自分にはママを助けられない』と無力感を感じる。

モラハラの理念事態は目新しいものではありませんが、ドキュメンタリータッチのせいか、より一層切実さが画面から伝わるようでした。

ただ、登場していた方が「自分が受けていたのは精神的DVだったんだと気づいた」の部分は実は「モラハラ」でしたし、私もモラハラで気づきました。精神的DVでは気づけなかった。

夫がしているのはハラスメント(嫌がらせ)なんだと言われたら「その通り!」と言うけれど、虐待だDVだと言われたら気づけない。気づきにはやっぱりハラスメント、モラルハラスメントという言葉がどうしても入り口には必要なのです。今回はそれを再認識しました。

と言って、モラハラではないものを簡単に「モラハラだ」と言ってしまう現在をどうするかという振り出しにもどりました。

共同親権の話もあり、子どもをめぐる夫婦問題はずっとヒートアップしたままですが、共同親権には精神的DVをどうするかの議論がされるはずですので、今回の番組は(NHK教育だし)国民にモラハラを知ってもらう一助になればいいなと思います。