あの時に言わなくて未だに後悔していること

私の家の近くには割と大きな保育園があります。今でもその保育園の前を通ると「あの時になぜ言わなかったんだろう」と後悔することがあります。

それはお迎えの保護者がパラパラとやってくる夕方過ぎのこと。70代後半と思われる、絵に描いたような白髪頭のおばあさんが声高にふたりのお母さんに向かって怒鳴りつけていました。

その三人のそばを通り過ぎる時に聞こえてきたのは

「こんなところに子どもを預けて!自分の子どもくらい自分で育てなさい!」という声でした。

ふたりのお母さんは困ったように下を向いていました。私はそのおばあさんに言ってやろうかどうしようか迷って、言うタイミングを失って通り過ぎてしまったことを今も後悔しています。

「このお母さんたちが働いているからアンタは年金をもらえてるんですっ!そんなことを言うんだったら、今すぐ役所に行って自分は年金はいらないからと言って来い!」

我が母も「子ども子どもって子どもにばっかりお金をばらまいて、あたしらの時はそんなお金がなくてもちゃんと自分で子どもを育てたもんだ」と言ってる。

母よ。あなたが子育てをしたのは60年以上前のこと。時代は大きく変わる。60年前は便利な家電も車もなかったでしょ。高校を卒業したら働くのが当たりまえ、中卒で働いていた人もいたでしょ。

それと現代を同等に置くのがおかしい。昔はお父さんひとりの稼ぎで一家が食べられたけれど、今は低賃金の夫婦がふたりで働いてなんとかなる時代。ひとりが倒れたらアウトだ。

昔は近所の婆ちゃんが子どもの面倒をみてくれたかもしれないけれど、今はそんなことはできない。保育園に6時過ぎまでしっかりと預けて働かないといけないんです。

「子どもを預けて楽をしている」わけではなく、「子どもを預けて税金を納めて社会を回している」んです。

あの婆ちゃんにはわからない理屈かもしれないけれど。