いろいろと相談をお受けしていて、一番多いご希望は「今の家に自分と子どもが住んで、夫には出て行って欲しい。生活費は今まで通り受け取りたい」というものです。
えっとですね、まず、夫が出て行かなければならない理由がないのです。例えば夫が大乱闘をして妻子がけがをして、夫が逮捕された場合は警察から「家から出ていくように」と命令されることはあります。
警察は「このままでは刃傷沙汰になって危ないと判断」した場合も、夫に一旦どこかに行くように命じることはあるかもしれません。
いずれにしても警察の関与が必要です。
警察以外で夫に家から出ていくように言える人はいるでしょうか?ご親族はどうでしょうか?と伺うと、ほぼ全員「いません」と言います。
では裁判所の調停ではどうでしょうか。その前に、離婚調停を起こすときはとにかく別居することが第一です。同居したまま調停をして、裁判所で火の粉を散らして、ふたりとも同じ家に帰ってくるって、怖くないですか?
そもそも離婚調停を起こすためには「もうこの夫とは一緒に暮らしていけない」という証拠が必要です。その証拠とは夫と離れること、夫が出て行かないならあなたが家を出ることです。家は夫も住む権利がありますので、家から出なければならない理由がないのです。
警察以外、誰も夫に「家から出ろ」とは言ってはくれないのです。
夫に家から出て行ってもらい、小さなアパートに住んでもらって不自由な暮らしをしてもらい、生活費は今まで通りの金額が欲しいというみんなの願いはまず難しいというより不可能です。弁護士に頼んでも無理でしょう。
もしこれを「わかりました」と言ってくれるような相手なら、そもそも離婚なんかする必要はないのです。
これからのことを考えるときは、この希望はまず捨てて、どうやって家を出て自活するかを考えた方が早道です。
そう思うと、事の成り行きとはいえ私の場合、怒り狂った夫が家を飛び出し、戻ってこようとするのを私が阻止し、その合間に離婚調停が成立し、私が子どもと一緒に家に住み続けることができたのは一生分の運をここにつぎ込んだようなものだったのかもしれません。