やってもやらなくても後悔

90歳を過ぎた母はとても不幸そうです。常に愚痴ばかりの会話です。首都圏の施設に来てはどうかの話になった時、私は一切口をはさみませんでした。「こうしたら?」などと言ったら、どうせ後から「あんたがあの時にああいうから」と必ず責任転嫁されること間違いなしだからです。

だから自分で決めてもらいました。年寄りは動かしてはいけない、環境の変化についていけない、体が不調になったり、最悪死が早くなるというのは知っていました。でも彼女がそうしたいというのなら好きなようにさせました。これを言って「やめた方がいい」と言ったら、「あんたがあの時にああいう~(以下同文)」

来てみたら、毎週施設に子や孫がやってきて、母を囲んでわいわいと賑やかになる予定(母の勝手な想像)だったのに、誰も来ない。まもなく起こったコロナ騒動で、自由に出歩くこともできなくなった。

出歩くのもいちいち出先と帰る時間を書くのが面倒。年金だけでは足りないので、貯金から2~3万円ずつ下ろしているのですが、数字が減るのが「恐怖」。

「来るんじゃなかった、来なければよかった。コロナがなければ帰っていた」と会えば必ずいう愚痴愚痴。

最近いいことがありました。売りに出していた実家が売れたのです。町ではない集落というような不便なところにある家でしたから、売れるのは難しいだろうと思っていましたが、家の見栄えに気をかける母の丹精込めた見た目の良さのせいでしょうか。無事に売れました。

売れるまでは「早く売れてほしいと、毎日神様にお願いしているだよ。思い残すのはこれだけだ」と言っていましたが、売れてみると「売らなければよかった」「住んでいた家を手放すということは身を切られるようだ」と愚痴愚痴愚痴。

あら?私が家を売った時は「売れてよかったじゃない~♪」と言ってたのはだ~れ?身を切られるような私の思いにはまったく気づかなかったのはだ~れ?

転居するときに「捨てるのはしのびないものを預かってほしい」とお願いしたら、「さっさと捨ててしまえ」と言ったけど、自分が同じことになった時「あれを預かって、これは捨てたくない」と言ってきたのはだ~れ?

自分も同じ思いをしなければ気がつかない、想像力のない人です。

やってもやらなくても後悔する。後悔しかない人生です。