不機嫌の椅子

ネットを徘徊していて、林真理子さんが「家には不機嫌の椅子があって、夫はいつもそこに座っている」という一文が目に留まりました。そういえば、以前同じ文章を同じ林真理子さんで見たことがあります。

「不機嫌の椅子」と聞いたら、いっぺんでその状況がわかります。ちなみに「不機嫌の椅子」という言葉を最初に考案したのは田辺聖子さんだそうです。

”家には「不機嫌の椅子」というものが1個だけある。最初に誰かがそこに座ったら、他の人は座れない”

#さすがお聖さん、うまいこと言うな。

モラハラ家庭ではその椅子は「誰かが座る」という概念はありません。そこに座る人は決まっています。もし空いていても(夫が不機嫌でなくても)、誰がかがそこに座ることは絶対にない。

林真理子さんのエッセイには時々この「不機嫌の椅子」を独り占めしている夫が登場します。林さんが夫のことをこんなに叩いていいのかと思うほど、「嫌なヤツ!」のオーラが本から立ち上るほど書いています。

いつのエッセイだったから、「いつも機嫌が悪いが、お腹が空いていると更に機嫌が悪くなる」と書いて「海老の皮をむ」いていました。

林さんの夫は林さんの書いたものを読まないのだろうか、読んでもなんとも思わないのだろうか。モラ夫ならばもう離婚か文筆業ができなくなるかの選択を迫られることになるだろうけど。

どうやら林さんの夫は林真理子が大人気の作家であることをあまり知らずに見合い結婚をしたようで、そんな人気作家の夫になるということは、それなりの苦労が伴うことを想像できなかったようです。

でも、いつぞやテレビで「林真理子の自宅訪問」をしていたら、高級住宅街の戸建ての家のガレージには車に疎い私が見ても高級そうな外車が複数台止まっていました。これを書くにあたってちょっとネットでググってみたら、林さんが買ってあげたそう。

と書くと、「女房から買ってもらったという僻みがあるから、不機嫌の椅子に座るのではないか」と想像できそうですが、そうかな。そうだったら1台買って止めると思うな。モラ夫によく似た、一度手を上げたら下し方のわからない昭和の親父だったら、絶対に女房から買ってもらった車に嬉しそうに乗るなんてことはしないはず。

モラ夫と生活していると、夫の機嫌にはものすごく敏感になる。ただし、モラ夫の場合は不機嫌の理由がまったく読めない。同じことをしても、ある時は機嫌が良く、ある時はダメという、その時によって違うので、予想がつかない。だから混乱する。周りからは「ちゃんと夫が何を欲しているか気遣え」と言われる。

林真理子さんの夫は不機嫌になる理由が一定なのか、ゴロゴロ始終動くのか伺ってみたいものです。