養育費といふもの

養育費をずっともらい続けられている方は昔からずっと変わらず2割程度です。8割の方は最初から養育費の取り決めをせずに離婚しているか、踏み倒されているかです。

養育費を払う側は、この養育費をどう思っているのでしょうか。離婚後も子どもの養育に関わりたいと思っているならば、100%養育費を払っているはず。養育費は払わないけれど、養育に関わりたいなんてことはあり得ない。

離れて暮らしていて、いつもはいないもう片方の親の存在を感じるのは養育費が支払われた時です。この時ほど離婚で離ればなれにはなったけど、子を思うことを形にできることはありません。

養育費が滞る可能性があるので、一括で欲しいという方は大勢いますが、それを相手に飲ませるのはなかなか大変です。お金のある相手ならば「本来ならば20歳までの支払いで1千万円だけど、一括なら500万円でもいい」という条件に乗ってくるかもしれませんが、悪い相手だと踏み倒しが可能なのに一括で払うなんて損だ、と考えるかもしれません。

払わなければ強制執行という手段もありますが、これが自営業や職を転々とするような相手だと難しいものがあります。(強制執行についてはちょっと調べてみたので、別の機会に書いてみます)

離れても自分はその子の親であることを1月に1回感じることができる、その子を忘れずに思っていることを表現できる「養育費」。よもや共同親権を訴える方の中に不払いする人がいるとは思えませんが、養育費は坦々と払い続けることに意義のあるものであり、何かと相殺できるようなものではないのだろうと思います。

さらに家族は形態を変えます。相手が再婚することも、子どもができることも、こちらの子どもが進学することも重い病気になることもあるでしょう。養育費はその都度見直しして支払うものだと考えると、「それは変でしょ」ということになる。

ただ、何しろきちんともらえている人が2割しかいないので、これは不安だから最初にに一括でという気持ちはとてもよくわかります。この「8割払っていない状況」を何とかしてほしい。諸外国のように国がいったん肩代わりし、税金と同じように夫から取り立てるというシステムすれば、この一括問題は帳消しになるのですが。

養育費や婚姻費用を減らすために仕事をやめたり、わざと収入の低い部署に異動したりすることもあります。そのくせ「妻がちゃんと子どもを養育しているか心配で」などと言う。心配するなら金をくれと言ってやりたい。

できない要求

相談員をしていて、結構多くの方が要望されることがあります。それは「私もパートで稼いでいたので、離婚のときはその分を返してほしい」という要求です。これから子どもを抱えて生きていかなければならないのだから、お金のことはとても心配だと思うのですが、残念ながらこれは通りません。

なぜ返してもらえないのかと憤る方には残酷なのですが、家庭というものは「双方が助け合って成り立つ」ものだからです。法律には同居・協力・扶助するという義務が書かれてありますが、「夫は稼いできて妻子を養う」とは書いていないのです。妻が稼いで夫を養っても別によいのです。

ただ、これをすると男性側は「ヒモ」と呼ばれるという現実もあります。妻が夫から養ってもらうのは「専業主婦」と呼ばれますが、これを男性がやろうとすると「ヒモ」と呼ばれる。

このあたりが法律と一般社会の乖離だなぁと思います。ヒモよりもちょっと軽いのは「髪結いの亭主」でしょう。昔は女性がつける職業はあまりなく、「髪結い」つまり美容師は女性が技術をつけることができる数少ない職業でした。

美容師を妻に持つと食いっぱぐれがなく、無職になっても養ってもらえるので男性側の「いいなぁ」という思いとともに「妻子を養なわないなんて男らしくない」という侮蔑の意味もありました。どちらかというと後者の方が大きかったと思います。

冒頭の話に戻りますが、本来夫婦が協力して家計を維持するものなので、妻が働いたものも家計維持に使われたわけですから、夫に返してほしいというのはとても変な話なのです。

「でも夫は自分の好き勝手なことをして趣味に使い果たし、実際の家計のほとんどは私の給料で賄っていました」という方も多いでしょう。特にモラハラの場合は多いです。ですが、いざ離婚の話になると、これはまったく認められません。夫が妻の稼いだお金で何をしても、何を買っても関係なく、家庭のために消費されたとみなされます。

だから、まじめにコツコツ頑張って倹約したり貯金したりした妻ほど離婚のときは損をします。やるせないですね。だから損の幅を少なくするよう、いろいろと考えて行動することが必要なのです。

モラハラの変化

私がモラハラ被害者同盟を作ってからもう18年が経ちます。0歳で生まれた子どもがもう高校3年。大学受験をしようかという年数です。この間に家族の形態がだいぶ変わってきました。

20年前は社会的DVというと、妻の縁戚や友人などとの交友を絶たせたり、「働かせない。家から出ないように始終電話をかけてくる」という意味で使われることが多かったのですが、この頃は様相が変わってきました。

#妻が家から出ていないか、電話を(当然固定しかない時代)1時間置きにかけてくるなんていう家もレアでなくありました。ああ、時代を感じる

ところが月日が流れ、終身雇用制が崩れ始め、男性もいつまでも今のところに勤め続けることができるのか、不安を抱えて働く時代になりました。給料も昔は定期昇給したものですが、今は働きに応じてランク付けされ、時にはランクダウンすることもありますし、働き方改革で残業が減り、受け取る給料は目減りする一方になっています。

この頃よく聞くのは「妻に働いてくれと言っているのに、なかなか働こうとしない」という夫たちの嘆きです。逆に妻側から「夫から働くように迫られて、時には怒鳴られたりする。モラハラだ」という声もあります。

妻側がなかなか重い腰が上がらないのは怠けているわけではなく、長い間働いていないので不安が大きいということが一番なのだと私も感じています。「パソコンも使えないし、職場でいじめにあったりするのも怖いし」という不安です。

そのほかに夫側も「働くなら家事も手抜きをせずにちゃんとすること」などという、これはもうダブルバインドだろうという、相反する指令が飛ぶこともあります。働け、しかし家事もちゃんとしろでは妻はとてもじゃないけど働きになんか行けません。

妻が働きに行くとなったら、家事は「手伝う」のではなく、半分以上は夫がするくらいの気合でやってもらわないと、家事は毎日行わなければならないことが山積みなのです。

その昔は「新聞を取りに行く」というのが夫がする家事でしたが、今は新聞そのものが無くなっていきつつあるので、こちらの方は仕事の方が無くなってしまった例。

「妻にはパートではなくもっと働いてもらいたい。ボクだってちゃんと家事は手伝ってますよ。ごみ捨てはボクの担当です」と言われた日には力が抜けてしまいます。ごみ捨てを家事だと思っている夫に家事をとはなんぞやをどう理解させるか。

働くことに腰が重い妻ばかりを責められないなぁと思います。

ペットを連れての避難

こちらからの続きです。

ペットの死は親が死んだ時よりも辛い。

避難の時はペットをどうするかが結構大きな問題になります。モラハラを知らない人にとってモラハラがどういうものなのか説明をするのが大変なように、ペットを飼ったことのない人にペットを連れての避難となると、たぶん相談員からは「いったんは置いて出て、後から」という話をされると思います。

残念ながらシェルターはほとんどが動物不可です。動物を飼っている方にはわからないかもしれませんが、私のように動物にトラウマがある人もいるし、アレルギーを持っている方もいるかもしれない。シェルターは様々な方が利用する場所ですから、そこに動物を連れて行くことはできません。

よく「ウチの犬はおとなしいから」という方がいますが、トラウマを持つ人にとって獰猛だろうが大人しかろうが関係ありません。怖いものは怖いのです。私もペロのような小型犬ならばなんとかなるようになりましたが、中型以上はいまだにダメです。

以前は私も「一旦は置いてきて」と言っていましたが、1年半子どもが連れてきた猫を飼ってからは、心が変わりました。

ペットを置いて出るなんて、できない。

となると、できるのは

◎ペットが一緒に住める部屋を探す

◎ペットが一緒に住めるような部屋を借りられるまで、がんばってお金を貯める(そのために収入を増やす)

◎ペットが死ぬまで待つ

これしかありません。ただ、シェルターに行く場合はいったん実家や友人に預かってもらうという手段があります。実家が遠い場合はどうするかですが、飛行機でペットを運んだ方がいました。遠いからダメではなく、遠くてもやってみましょう。子どもと同じくらい愛しているならば、がんばりましょう。

ただ、1匹ではなく2匹、3匹を飼っている方もいて、そういう方はこれ以上数を増やさないようにしましょう、です。

引きこもる夫

時々「夫が部屋に引きこもって出てこない」というお話を伺うことがあります。出てくるのは食事の時だけ。あとはずっと部屋にこもっているとのこと。ところが夫に言わせると、「自分は家族から疎外されている。自分がリビングに行くと、それまで笑っていた妻子がさっと表情を変え、子どもはそそくさと自分の部屋に行ってしまう」という。

「結局自分は家族団らんの中からはじかれている」といじけた夫は部屋に閉じこもるようになったというのが夫の意見です。この夫はなぜ自分が家族から疎まれているのかがわかりません。

ある有名人の方が結婚するときに「相手には緊張感をもってやってもらいたい。もしそれができなくなったら、自分は離婚届をいつでも出す」と言っていたのを雑誌か何かで読んで、「バカかこいつ」と思ったことがありました。

家庭は安らぎの場です。それなのに「緊張感をもってやってもらいたい」と言う。

それから10数年、何かのメディアでその方が「なんだか家の中で自分がのけ者になっているような気がするんです。妻や子が楽しそうにしているのに、自分だけ入れないんです」と寂しそうな、困惑したような声で語っていました。

そりゃそうでしょうよ。緊張感をもって生活しろなんて言うやつなんかと楽しく団らんなんかできるわけがない。子どもの顔を見ればこれは教育だ、しつけだ、お前のためだと言いながら小言を言う。そんな父親と話なんかしたいわけがない。だから父親が来るとさーっと自分の部屋に入っていくのです。それを「家族からこばまれている、疎外されている」といじける。

疎まれるにはそれなりの理由があるのに、自分のせいだとは思っていない。家族は自分の思うように動き、自分はお神輿に乗って担がれる存在だと思っている。長い時間をかけて妻と子は夫抜きのコミュニティを作っていたことに気づかず、ある日みんな自分とは会話を避けていることに気づく。

もちろん籠る夫の中にはゲームをしたり、趣味のフィギュアを作っていると様々な例もあるでしょう。ただ、「妻子が自分を大切にしてくれない。中心人物にしてくれない、ほめそやしてくれない」といじけて部屋に籠ってしまう夫も、どうやらいるようです。

避難応援プロジェクトに個人面談が追加

ただいま参加者募集中の避難応援プロジェクトですが、今回から新たに個人面談が加わりました。プロジェクトは参加者が一体になって質問を受け付けますが、大勢の前でご自分の状況をお話になりたくない方や、しっかりと相談したい方がいますので、新たに設けたものです。

そのことについて広報するためにここに書いたはいいのですが、この情報をサイトに載せてすぐに今回予定している枠がすべて埋まってしまいました。時間の関係で1枠しか取れないため、プロジェクト1回につき1名様限定にしていたという狭き門ではありました。

早々に枠が埋まってしまったのは、みなさんの要望が大きいものなのだとわかりましたので、複数名で行うプロジェクトの他に個別も増やそうかなと思っています。

このプロジェクト後に別居や離婚をされた方からのご報告が次々と入ってきています。やはり具体的なアドバイスは背中を押すのだなぁと思いました。同じような状況の方が集まってきているというのも孤独の中にいる方にとっては大きいと思います。

今回助成金をいただいての開催ではないので、自由度が高く、ある程度の人数幅が取れますので、お急ぎの方などがおられましたら増員も可能です。どうぞご興味のある方はお申込みください。

なお、岡山フェリースでリモートによる参加も可能です。詳しくは岡山フェリースへお問い合わせください。

光熱水費を払ってる!

モラハラの相談を受けると、「ローンと光熱水費は夫が払っていますが、それ以外の生活費はもらえません」というお話を、本当にたくさん伺います。そのような夫と話したことのある人から伺いましたが、「なんか、すごく考え方が面白いのよね」ということでした。

「もう鼻高々に『光熱水費は俺が払ってる!』っていうわけ。でも、4人家族の光熱水費なんて、2か月に1度の水道代を入れても2万円程度なわけよ。それを大威張りで『光熱水費を払ってる!』という。

さらに「学費も俺が払ってる!」と言うの。「あれ?公立の小学校ですよね?」と言ったら「給食費5千円は俺が支払ってる!」と、もうブリッジして頭が地面につくくらいそっくり返るわけ。

妻にはちゃんと食費の5万円を渡しているから、これで十分なはずだというから、『お子さんの洋服や床屋代とか洗剤や家庭の消耗品のお金は?』とか、意地悪く聞いてみたら、なんか、ぼーぜんとしちゃって。そういうものを買うという発想がまず全然ないのよね。生活費=食費と思っちゃってるの。

やっと『妻もパートで働いているんだから、そこからだせばいいでしょう。そもそも家計というものは一方の働きで成り立つわけじゃないですからね』と、いい考えが見つかったとばかり、一人でウンウンとうなづくわけ。

でも、下のお子さんはまだ幼稚園。フルタイムで働くのは難しい。せいぜい4~5万のパートしかできないじゃん。これが年収1千万の夫の言い分なのよ」

元に戻って「光熱水費を払ってる!」は、我が夫もよく言っていました。確かに月3万8千円のローンと光熱水費、つまり口座から落ちるお金は夫が払っていました。でも、夫が出していたのはそれだけです。食費、家庭消耗品、衣服、医療、その他もろもろは全額私の負担です。生活費を結婚している間、ただの1度ももらったことがありません。さらにボーナスは全額お取り上げでした。もし逆らおうものなら、無視が1か月以上続き、最後は大暴れの怒鳴り散らしになるのは目に見えているので、私もずっとそれに従っていました。

モラハラ相談を受けていて、「光熱水費は夫が~」の話を聞くと、ああ、またかと思います。なぜか世の中の人は「光熱水費」を一大出費と考えているようで、納得してしまう。光熱水費なんて、家計にとって大したボリュームではないです。

周りに人にも夫はそうアピールしているでしょうから、もしその話をしたら、「光熱水費は月2万円ですけどぉ」と言えるバックデータを用意しておきましょう。

ついでに夫の課税証明書を取っておきましょう。よく「夫の収入がわからない」という方がいます。課税証明書は同居している人なら誰でもとれます(委任状が必要な自治体もあります)。これで夫の収入がわかります。自治体が夫に照会することはありません。役所はそんなものをいちいち確認するほど暇ではありません。

そして家計簿をつける。めんどくさいはモラハラ家庭からの避難をするのに禁句です。避難はことごとくめんどくさいことの連続技です。せめて、我が家の光熱水費が月にどれくらいかかっているか。それだけは押さえておきましょう。

あちら側の言い分

コロナ患者も減少してきたので、しばらくご無沙汰していた母と、弟を交えて話をする機会がありました。その時にかなり前に離婚した従兄弟の話になりました。従兄弟は前の妻と別れて再婚をしています。前にも後にも子どもがいます。

「ああいう形で出て行った女だからさ」と弟が吐き捨てるように言いました。弟は従兄弟とかなり仲良しで、LINEでお互いの深い話をしているようです。

「ああいう形って?」

私は親戚付き合いが不得意なので、親戚とは冠婚葬祭以外で会うこともなく、ほとんど知りません。特にきょうだいの多かった父の親類縁者関係はさっぱりわかりません。町で会ってもわからないと思います。なので、従兄弟がなぜ離婚したのかも知りません。

「話し合いもしないで一方的に出て行ったんだよ」憎々しげに、吐き捨てるように弟が言いました。

あああ、これはよく聞く話だ。話し合いをしようとした、または何度もしたのだけど、夫はまったく一方的に自分の意見だけを言ってきたり大声で怒鳴りつけるので、もう話し合いは無駄と家を出る。もうモラハラ離婚相談をやっていると、ほとんどがこれです。

「話し合いはしたと思うよ。ただ、話し合いにならなかったから出るしかなかったんじゃない?」

「出て行ったっきり何の連絡もない」

(そりゃよかった。絶縁になるにこしたことはない)「養育費はちゃんと払ったの?」

「寄こせとは言わないから払ってないよ」

(そりゃだめだろ)「養育費は相手から言わなくても自分から渡すもんじゃないの?」

「???」

弟とっては意味不明のことだったようです。養育費は請求がなければ払わなくてもいいと思っているらしい、男どもは。

従兄弟はしっかりした仕事を持っていて、マメな心遣いができるまともな男だと思っていたけど、そうでもなかったみたい。前の妻がなぜ突然出て行ったのかはわからないけれど、養育費の請求もなかったということは、とにかく彼と絶縁したかったということでしょう。

ともかく、突然家から妻が出て行ってしまった夫の関係者というものは、「話し合いもしないで一方的に家を出た非常識な女」という感想を持つのですね。身びいきというのはこういうことなのでしょう。

ちなみに従兄弟の妹は、兄の今の配偶者が嫌い。「お兄ちゃんには『ほら、前の方がよかったでしょ』って、いつも言っているのよ」

私が従兄弟と仲良くするには前妻の悪口を言っておけばいいのかもしれませんが、別に従兄弟と仲良くしたいわけでもなく、いまさら前妻の肩を持って関係をわざわざ悪くする必要もありません。完全に傍観者です。

相手の関係者からよく思われようとする必要がないのに、「悪口を言われている」と気にする方がいます。身内は必ずあなたの悪口を言います。私も当然「〇〇さん(元夫)はいい人なのに、いきなり離婚状を叩きつけたわがまま女」ということになっているのでしょう。

相手方からどう思われようと、もう関係ないです。気にすると精神的負担が増えるので、さっさと過去はおっぽり出しましょう。

役所の「たらいまわし」について

よく「役所に行ったらあちこちたらいまわしにされた」という話を聞くことがあります。〇〇について聞こうと思ったら、××課へ行けと言われ、××課へ行ったら△△課へ行くように言われた、というようなことです。結局〇〇課でよかったのにという話もよく聞きます。

私も役所に勤めていましたから、役所の肩を持つわけではないのですが、この例の場合、希望する内容をしっかりと伝えていなかったのではないかなぁという場合があります。おそらく「え?その話って保険に関することだったんですか?DVっておっしゃるのでDVの相談かと思ったんですが」

DVの相談は多岐に渡ります。家から避難したいとなると、保険はどうする、住民票はどうなる、子どもの転校はどうする、子どもの心のケアも考えたい、生活費も心細いし住居のあてもないなどなど盛りだくさんです。

利用者側の立場から言えば一か所で済ませたい内容なのですが、なにせお役所は縦割りですので、それぞれの部署に本人が出向いて全部のところでイチから事情を話さなければなりません。

被害者の方にその手間と精神的苦痛をさせないようにとできたのが「ワンストップサービス」です。ある役所では最初に被害状況を聞き取り、それを文書化しそれを持ってあちこち回ればいいように工夫したところもあります。

実のところこれもちょっと問題があって、書いてあるといっても口頭での説明もやっぱり必要で、「え?文書に夫はいつも帰りが遅くと書いてあるけど単身赴任なのですか?」「あ、そうです。それは以前の時で」などの勘違い、聞き違いが結構発生します。

中には○○課と××課で話した内容が全然違うということも発生します。

#被害者も混乱して思考能力が落ちていますから、そうキチキチとはできない場合もありますよね

私が一番いいなぁと思っているのは、モラハラ被害者同盟で行っている「避難応援プロジェクト」のような、オープンダイヤログ形式です。その部門の担当者が被害者と一同に介し、質問ーそれに対する答えーそれに付随する他課からの提案ーさらに弁護士からの法的支援など、一被害者に対する支援がそこでまるっと収まってしまう形式です。

ただ、これが実現しないのは

#役所はあまりにも忙しすぎて、ひとりにかけられる時間を捻出できません。

それをするとなると、担当者は係長以上の責任ある人が回答しなくてはならず、といって係長よりも非常勤のDV担当者の方が事情には詳しくとなり、それぞれの部署から2人×課の数となり、その人たちのスケジュールを合わせるとなると至難の技、そして被害者はひとりではない。大勢いる。

ということで、なかなかこの形式は実現は難しそうなのですが、もしやっているところがありましたら教えて下さい。

もうひとつ、たらいまわしが行われるのは理由があります。たとえばDV相談員に児童手当について聞こうとします。DV相談員は児童手当の仕組みもある程度の額も知っています。でもそこで「〇円程度もらえます」とは言えません。

制度仕組みというのは常に動きますし、その方がそれをもらえる資格があるかどうかもわかりません。本人が「年収は100万円程度です」と言っても、それが本当かどうかわかりません。だから担当課へ行って自分で聞いてもらうことになります。

私自身まったくDVと関係のない課の人が、ちょっと本を読んだり調べたりした程度の知識で「DVってね」と話されるのは迷惑です。やめていただきたい。とっととこちらへ案内して欲しいと思っています。

餅は餅屋。餅のことは餅屋に聞け。チョコレート屋に餅のことはわからないのです。

さて、この避難応援プロジェクトはコロナの非常事態宣言のため今年度は実施することができませんでしたが、やっと始動を始めました。11月、2月に行う予定で現在計画を詰めています。もしご希望の方がいらっしゃいましたら、こちらまでご連絡ください。詳細をお知らせします。


専業主婦は無保険のドライバー

先日損保会社の方とお話しする機会がありました。損保会社ですから、自動車事故にとても詳しい方で、いろいろなお話を伺いました。

私は地方に住んでいた時は毎日運転していましたが、東京に来て車を持つことの必要性を感じないので手放し、必要な時にレンタカーを借りています。

昔、車を持っていた時は当然自動車保険にばっちり入り、30年以上運転をしていましたが、保険を使ったのは1度きりです。それも職場の駐車場で車を止めようとバックした際、隣に止まっている同僚の白い車のバンパーに私の車の赤い塗料が付いてしまったというもの。

保険会社からは「これはちょとこすれば取れるものだから、保険の適用ではない」と言われましたが、同僚が強固に「バンパー総交換」を主張するので、保険屋さんも「ふたりとも私のお客さんなので今回は」ということで適用してもらいました。

保険を使ったのはその1回だけです。

その損保会社の方も「保険を使うような事故はめったにない。そういう優良な方がこの保険を支えているのですよね」と仰っていました。

そしていつしか話は離婚の話になりました。その方は給料振り込み口座のキャッシュカードを妻に渡していて、妻は好きなようにそこからお金を出し入れしているそう。

日々モラハラ被害者の方から「夫からは厳しくお金について小言を言われる」という話を伺っているし、私自身、自分以外の人の収入に頼ったことがない。ましてや自分のキャッシュカードを渡すなんて、親や子にも絶対にしない。

それなのに、世の多くの男性は自分の稼ぎが入金される口座のキャッシュカードを妻に渡しているという。

私が驚いたのが意外だったのか、その方は「妻を信頼しているからできることで」と仰るのですが、同居人(ああ、夫婦というのか)を信頼するのと、自分の稼ぎを全額渡すというのは違うと思う。

その方は「1/3の人が離婚するっていいますよね」と仰るので、「あれは数字のマジックで、その証拠に周りの人、1/3が離婚していますか?」と伺ったら「いいえ」とお答えになる。

「離婚する人はそう多くはないです。でも離婚したらたちまち困るのは収入が無くなる専業主婦です。あなたは保険無しで車を運転する人をどう思いますか?」

「無謀です。そんな怖いことできませんよ。確かに事故そのものは少ないですが、事故にあったら大損害になるし、へたをすれば破産、一家離散です」

「専業主婦は保険無しに車を運転するようなものです。もし事故(離婚した)ったら破産です。では車を注意深く運転すれば事故はないと思いますか?」

「自動車事故は1/3がもらい事故です。いくら自分が注意して運転していても、相手からぶつかってくることが多いんです」

「同じようにいくら専業主婦として一生懸命がんばっていても、夫が事故や病気で死んだり、不倫したり、うつ病になったり、会社が倒産してしまう可能性はとても大きいんです」

「そうですか。でも私の周りではそんな例はあまり聞かないなぁ」

あなたの周りではね。でも、私の周りでは山のようにありますよ。

めったにないことかもしれないけれど、保険には入る。入りましょう。