今年の1月1日の深夜、正確には1月2日の午前に、とても重い内容の番組が放送されました。
2024年1月1日深夜1時05分より、『日本怪奇ルポルタージュ』(テレビ東京)
この放送の元になったのは『母という呪縛 娘という牢獄』というルポルタージュです。
この事件は2018年滋賀県で医学部を9浪した娘が母親を殺し、バラバラにして捨てたというものです。
「娘が母を殺した」
「バラバラにして捨てた」
「娘は医学部を9浪していた」
というワードが非常に興味をそそったのか、このルポルタージュは重版を重ねたベストセラーになっているそうです。私が昨年夏に図書館に予約したこの本の待ち人は現在49人です。
私も事件当時はネットニュースなどを見ていたと思いますが、それほど重要な追記事がなかったのか、そのうちに忘れ去っていました。
とある母娘関係の研修でこの本が取り上げられ、事件の真相を知ることになりました。
医学部進学は母の望みであり、その期待に応えるべく娘は努力をしましたが合格することができず、その結果として9年間浪人をしていました。
番組の中ではこの母娘の奇妙な生活が再現ドラマとして放送されました。特に壮絶なのは娘の成績が思うようなものでなかったときに、金属の棒で娘の体を叩いていた、しかもその数は合格偏差値と実際の偏差値の差の数分だけた殴打していたというものです。
偏差値72が合格点で実際が65だったら7回殴打する。60だったら12回殴打する。
最初は掃除機のパイプで叩いていたのですが叩きすぎて割れてしまい、金属の棒に変わったというなんとも壮絶な話です。娘は必死に母の期待に応えようと勉強もしたし、家から逃げたこともありましたが、結局連れ戻されてしまいました。
番組にはこのルポルタージュの著者も出演し、解説を加えていました。この事件の内容につきましてはこちらに詳しく書かれています。
https://gendai.media/articles/-/122081?imp=0
講談社ホームページ
私はまだこの本を読んでいないのですが、なぜこれほどまでに母親は娘の医学部進学に狂気のように固執したのか。
殺された母親の実母はどういう事情なのか、いつ頃の話なのかわからないのですが、母親の実母はアメリカに渡り、歯科医師と結婚しています。つまり母親は実の母から育てられていせん。
ただ、絶縁したわけではなく、歯科医師という高額所得者と結婚したので裕福だったとみえ、娘の家を建てたり、生活の援助も、孫娘の進学にかかわる教育費も出していました。
「アメばあちゃん」と呼ぶ祖母に孫娘は電話をしたりしていますので、密接につながりがありました。
娘を置いてアメリカに渡った母。置いて行かれた娘。
どのような事情でそうなったのかはわかりませんが、母に認めてもらいたいという気持ちが人一倍大きかったのではないかと思うのです。
孫娘が医学部に入学し医者になれば、母を喜ばせることができる。自分を認めてもらうことができる。
それは母に対する狂おしいほどの思慕だったのではないかと思うのです。
祖母が殺された娘に対してどのように接していたのかは出てこないのでわからないのですが、もしかしたら娘が思うほど孫娘の進学に強い熱望はなかったのかもしれません。
置いてきてしまった娘の願いをかなえたいと、置いてきてしまった罪悪感の埋め合わせのように援助を続けていたのではないか。娘はただひとりで空回りをしていただけなのではないか。
そんな気もするのです。
教育虐待は主に父親から息子へあるものですが、この事件は母から娘へでした。ただ、父親から息子へのものが果しえなかった自分の夢を叶えたいとか、息子が将来学歴でこまらぬようにというようなものとは違い、ただ、母に愛して欲しい、認めて欲しいと恋焦がれた末のものだったのではないでしょうか。
祖母、母、娘という3人の女性の様々な思いが引き起こしたこの事件。
お正月の深夜に放送されるにはあまりにも重い事件でした。