人は復讐が大好きです。その証拠に小説も映画もテレビも復讐劇だとアツくなります。世界中の文学や映画で復讐を取り扱ったもののめちゃくちゃ多いこと。
わが母が人に話す話の十八番があります。
パート勤めをしていた時、同僚にとても意地悪な男性がいた。聞こえよがしに母の悪口をいう、何か聞いても知らぬふりをしたり、怒鳴りつけるような返答をする。しかしながらこの男性はキーになる仕事をしていたので、ケンカを売るわけにもいかず黙って耐えた。
月日が流れ、母はパートを辞めて家にいたが、ある日たまたま家の外に出たところ、この男性が乗っていた車が故障で止まってしまっていた。10人程度が乗れるバンで、他の人たちも暑い中、修理業者がなかなか来ず困っていた。
母は「アイツだ」と思ったが、「ここで仕返しをしてはいけない。広い心を持たなければいけない」と思い、「さぁさぁ、ウチに入って涼んで」と家に招き入れ、冷たい飲み物や果物を出して接待した。件の男性はたぶん自分が母を虐めていたのを覚えていたのだろう。当初居心地が悪そうだったが、修理業者が来て車が動くようになり、車に乗り込む前に母にぺこりと頭を下げ「ありがとうございました」と礼を言って帰った。
その後、たまたまその男性が作業をしている場所に出くわした時、その男性から「この人はとてもいい人だから」と周りにいる人に大きな声で告げ、母がやろうとしていた用事を全部やってくれた。
別れるときには「またな、またな」と大きな声を出していつまでも手をふっていましたとさ。
ちゃんちゃん♪
日本昔話ではありません。この話を沢山の人たちひとりひとりに聞かせるのを私は横で聞いていました。もう耳にタコやらイカやらが張り付いちゃって(笑
母がこの話を好んで人にする理由はみっつ。
◎たとえ昔意地悪をされても、それを恨んで困っている人を助けないなどということはいけない。広い心を持たなければならない。
◎その時は必ず相手は虐めたことを恥じ、助けた人に感謝し、恩返しをするものである。
◎自分は昔意地悪をされた人を助けた、広い心の持ち主である。
早い話、これは母の自慢話です(笑
大体年寄りは教訓話が好きなものだし。
でも、ハラッサー相手にはこれは通じません。恩返しなどという言葉は彼らの脳にはありません。どう利益を得るか、得をするか、自分が相手を支配するかしかありません。それでも母のように「忠義を尽くせばきっと相手もわかってくれる」という昔話に脳が占領されている人たちにとって、「夫に優しくすればきっと相手も変わる」と固く思っている人は相当多いです。もはや昭和を通り越して明治時代のようなことを書いている「モラハラ夫への対処法」もあります。