母なるサラ・コナー

先日、見るともなしにたまたまついていたテレビ番組(波瀾万丈)に鈴木紗理奈さんが出演していて、「サラ・コナーが大好きだったんです」と言ったので、えっとビックリ!ここでサラ・コナーの名前が出てくるとは思わなかった。

サラ・コナーは私が子育てをしていたときに目指していた人です。といってもサラは実在の人物ではありません。シュワちゃんの「ターミネーター」に登場していた主人公です。

「ターミネーター1」ではターミネーターから追いかけられて、ただひたすらキャーキャーと逃げ回っていた女子大生のサラが、自分の息子は未来で人類を救うジョン・コナーになるのだと知り(その時まだ子どもは生まれていない)、 格闘技、武器の使い方はもちろん、ITスキルを使ってATMからお金を盗みだす方法まで、ターミネーターと戦うためのあらゆる技術を息子に教え込みます。

そして未来からはこのジョンとサラを過去の時点で抹殺すべく、新しいターミネーターがやってきます。。。

という、「タイタニック」を作ったキャメロン監督が制作した映画です。この時のシュワちゃん、若い!

よく「男の子には父親が必要だ」という言葉を信じて離婚をためらう方がいますが、なぜ男の子には父親が必要と言われるかと言えば、男の子には男性モデルが必要ということでしょう。子どもは身近な大人をモデルにして育つ、だから「男の子には父親が」ということになるのでしょう。

では身近な男性であるモラ夫は、そのモデルとしてふさわしいでしょうか。「男の子にはモデルとなる男性像が必要だ」という言葉を信じて離れるのをためらうのであれば、「自分の子どもがモラ夫をモデルにすることを望む」ことになります。

「反面教師にすればよい」という希望が叶うかどうかはまったく賭けのようなものです。

男の子のモデルは別に父親でなくてもいい。叔父さんでも、学校の先生でも、部活の先輩でも、アニメの主人公でもいい。この子が大きくなっていくときに「こんな大人になりたい」と思う男性に巡り会えたら、それで充分なはずです。

シングルマザーの家には父親はいません。でも、母親だけでもサラのように(人類を救うなんて大それたことは望まないって)「子どもに生きる力を身につけさせる」ことはできると思うです。

子どもにはサッカーもスキーも車の運転も旅のノウハウも勉強も私が教えました。子どもがギターを弾きたいと言った時は、私はギターができませんので、安い個人の教室を探して行かせました。自分ができないところはアウトソーシングすればいいし、ある程度おおきくなれば、子どもが自分で探してきます。

夫が子どもに教えたのはゲームとパチンコぐらいのものです。ただ、「人を力で支配して自分の思い通りに動かそうとするならば、結局自分が不幸になる」ということは、身をもって教えたと言えるかもしれません。

王座の譲渡

私が離婚を迷っていたとき、背中を押してくれたのが精神科医の言葉でした。

「男の子は父と殺し合うかもしれない」

それはもうびっくり仰天でしたが、この「殺し合う父と息子」は何もモラハラ家庭だけでなく、普通の家庭でも起こりうることです。実際私の周りでも、殺し合うまでは行かないまでも、殴り合いの喧嘩になったという話は多く聞きます。ただ、モラハラ家庭は父親の支配がものすごいのと、父の政権への執着が常軌を逸しているので、大事になる可能性はあります。

相談を受ける方から「夫はとても子どもを可愛がります。子どももとても夫になついています。だから離れることをためらってしまいます」と伺うことがとても多いです。ただ、この時の子どもの年齢はだいたい小学校低学年までです。

その後、子どもに自我が芽生え、自己主張するようになると、夫は力で押さえつけようとして子どもに手をあげるようになります。子どももそんな父を恐れて最初はビクビクしていますが、体が大きくなり、年を取り衰えていく父に勝る力を持つようになると、殴り合いの喧嘩になります。そして、たいていは新しい王が誕生することになっています。政権交代です。

これを私は間近で見ていました。我が家ではなく義兄宅でしたが、このとおりのことが起こりました。子どもに負けた義兄は翌日朝から急にペコペコしだし、息子に「何か欲しいものはないのか?」などと手をこすらんばかりに言ったと義姉から聞きました。このコントのような展開に、義姉も呆れ顔でした。

ただ、義兄の腹いせは義姉と娘という、他の弱いものに向かうようになっていったとのことです。モラ夫はどうしても常に誰かを餌食にしないと生きていけない人物なのです。

「夫は子どもをとてもかわいがっている」というのは、子どもが自分の言うことを聞いている年齢までです。その後はふたりでこの家の政権を争うことになります。ただ、ある3世代が同居している家で、政権を持っているのは祖父で、中年の父はまだその支配下にあるという事例も見たことがありますので、交代が起こらない場合もままあるようです。

この家の場合、祖父が孫を猫可愛がりして甘やかしたため、両親は子どもを躾けることができず、子どもは両親を見下し、成長してからモラハラ夫になってしまいました。

本来家庭内の政権は力による譲渡ではなく、子がその年令になったら、父は座を下りて次の世代に譲るのが正しいやり方であるのは言うまでもありません。そういった平和に世代交代が行われる家は家族がみな穏やかで、「父は優しい人だった」と、亡くなった後も愛され続けます。

びくびくビリー

絵本は時として、ぶ厚い哲学書より深い気づきを与えてくれます。本の売れ行きは右肩下がりですが、絵本や児童書は変わらず売れ続けているそうです。「我が子に本好きになって欲しい」は、どこの親も同じなのでしょう。

「びくびくビリー」はたまたま何かで紹介されていた本です。

ビリーは怖がり屋。いつも何かに怯えていて、夜眠れません。そんなビリーにおばあちゃんは「心配引き受け人形」を与えます。心配ごとは全部この人形が引き受けてくれるよとおばあちゃんから教えてもらい、ビリーは半信半疑でその人形を枕の下に入れてベッドに入ったのですが・・・

この「心配ごと引受人形」はグアテマラで古くから伝わるもので、実際に今も使われているそうです、と思ってアマゾンを見たら、ある。

さすがアマゾンと言っていいのか、あるのよー(笑
この分だともしかして「呪いのブードゥ人形」もあるかなと思って探してみたらあった(笑。よく見ると「心配ごと引受人形」ような「看護師人形」とか「家庭円満人形」とかいろいろありました。これはもう「開運・厄除けお守り」ですね。

大の大人だってお守り握りしめて祈るんだから、世の中のしくみがよくわかっていない子どもなら、なおさらでしょう。依頼心が強くなるとか言う人もいるかもしれませんが、子どもに精神安定剤を飲ませるわけにもいきません。眠れない子どもには、この「心配ごと引受人形」をもたせて安心させるというのもひとつの手だなと思います。


いなばのしろうさぎさん

お引越しの時にいろいろなファイルを開けていたら、リンクのページに「いなばのしろうさぎ」さんがあることに気がつきました。いなばさんのホームページはジオシティーズにあります。今この時点でお引越しされていないということは、もうホームページを続けないおつもりなのかもしれません。

惜しいなぁ、いなばさんのサイト。出版もされていて、被害者支援もされていたのに。

私がモラハラ被害者同盟を作った初期の頃に、いなばさんのホームページを見つけました。かわいらしいうさぎのアイコンをクリックすると、そこにあったのは、ワニに食われるよりも恐ろしい現実でした。「モノローグ」をクリックすると、いなばさんのメッセージになります。いなばさんは身体的暴力の被害者でしたから、夫からの暴力について書かれていますが、それ以上に恐ろしいのは、いなばさんを守ろうとしていた子どもたちが、父親と同様にいなばさんに暴力をふるうようになるくだりです

転載禁止なのでここにコピーできないのが残念なのですが、子どもたちは小さな手を広げて暴力をふるおうとする父親の前にたちはだかり、いなばさんを守ろうとします。そんな子どもたちの姿の記憶を、いなばさんは宝物として大切にとってあります。後に成長した兄弟がふたりして、母の体のどこを狙って殴ろうかと話し合うことになるのに。殴るのに缶詰を使うのは痛すぎるから止めてほしいと書いているのに。

号泣

その映像を私も想像できるだけに、ただ、号泣。

いなばさんは、いつか夫は変わってくれると思っていたけれど、夫の変化を待つうちに子どもたちが父親のようになってしまったと書いています。私も子どもたちが父とそっくりになり、母が家の中で孤立してしまった例をたくさん見てきました。年老いた母をこき使う子どもたち、罵声を浴びせる子どもたちの例を、たくさんたくさん見てきました。

あと4日でいなばさんのホームページはすべて無くなりますので、私は保存しておこうと思っています。必要と思われる方はご一緒にどうぞ。