秋茄子は嫁に食わすな

この諺が出てくると、必ずふたつの解釈がでてきます。

1.秋茄子はとても美味しいので嫁には食べさせたくない

2.茄子は体を冷やすので、大事な嫁には食べさせてはいけない

諺とは昔からあるものです。昔は嫁は子を産む道具と労働力のみに必要とされており、結婚した家では最下級の存在でした。その家の娘が離縁して家に戻ってくると、何より血筋が優先されますので、その娘よりも下の存在でした。血が繋がっていない者はよそ者でしかないのです。

そんなよそ者の体を気遣うわけがない。大体気遣わなければならないほど茄子の成分が危険ならば、嫁だけではなく家族全員「食べてはならぬ」はず。

それを「体を冷やすから」などと言って相手を気遣う良い人風に装う。これを詭弁といいます。

世の中は詭弁で満ちています。一見こちらの身を案じているようで、実は相手を蹴落とそう、相手の意見をつぶそうとしている。

こんなものに騙されないぞと、いろんな詐欺に対峙するのと同様に慎重に話の裏を読みに行きます。

生活費を渡さない夫が起こした離婚裁判 「兵糧攻め」は許されるのか

9月15日の朝日新聞掲載された記事です。

https://digital.asahi.com/articles/AST9B1SLCT9BUTIL01PM.html

有料記事なので、ざっと概要を説明すると、

”ある夫婦は2006年に結婚し、2子をもうけた。夫は会社員として夜遅くまで働いた。夫婦関係は悪化していき、夫は17年に別居を始めた。”

”夫は当初、生活費として月46万円を妻に渡していたが、うち23万円は、夫名義の持ち家に住む妻子から「家賃」として払い戻させていた。 その後、夫は離婚調停を申し立てたが不成立。これを機に、生活費を渡さなくなり、妻は家賃を支払えなくなった。”

さすがはモラ夫です。妻子から家賃を取っていたそうなのですが、契約書などは作ったんでしょうか。妻は「はい、そうですか」と自分の夫と家賃契約を結んだのでしょうか。ちょっと不思議です。

”別居が続く中、19年に夫は「未払い分」の家賃支払いを求める訴訟を起こした(のちに請求棄却が確定)。さらに21年には、離婚を求める訴訟も東京家裁に起こした。”

すごいですね。妻相手に家賃未払いの訴訟を起こすとは。

その際夫が提出した陳述書にはこうあります。

”「妻は高級マンションでの暮らしを希望し、価格と品質が釣り合わない居室を不本意ながら購入させられた」

 「激務を終えて午前5時に疲れて帰っても、お風呂が洗濯物で埋め尽くされ、シャワーを浴びられなかった」

 「自動掃除機を使うために椅子が机の上に積み上げられ、座って休めなかった」”

裁判所はこの離婚を認めませんでした。その判決が結構痛快です。

”まず、風呂が洗濯物で埋め尽くされていたとの主張には「取り込んでからシャワーを浴びればよいだけ」。椅子が机の上に積み上げられていた点には「下ろして座ればよいだけ」とし、こうした主張が「婚姻を継続し難い重大な事由」だとはおよそ理解しがたい、と述べた。”

ナイス!裁判官!グッジョブだぜ!

”判決はこうした点も踏まえ、夫婦関係の破綻については「一方的に離婚を実現させようとした夫が、婚姻費用分担義務を負っていることを顧みることなく、『兵糧攻め』ともいうべき身勝手な振る舞いを続け、関係修復を困難にした」とした。

 さらに、子どもが幼く、妻の直近の年収が200万円に満たないことから、「離婚して生活費の支払いを受けられなくなれば、妻子が経済的に極めて過酷な状況に置かれる」とも指摘。婚姻関係が壊れていても、原因を作った夫からの離婚請求は認められない、と結論づけた。”

離婚が求められないということは、婚姻費用が離婚が決定するまで夫がう支払わなければならないということです。実際799万円が未払い婚費として支払えという審判も出ています。

もし支払わなければ、不動産を持っているようですから、これを強制執行で抑えると。

裁判所は見ているところは見ているんですねぇ。

女性市長がラブホで男性職員に相談って

前橋市長“既婚男性とラブホテル会合”で500件の問い合わせや苦情が市役所に…小川市長は通常勤務

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6553550

今日のyahooの記事ですが、政治家の不倫とくれば引き合いに出されるのは国民民主党の玉木代表。

妻と一緒に出席したパーティー会場に愛人も一緒だったという驚きの行動でしたが、「妻や子からに怒られた」と家庭騒動を出して一見落着させた前例があるのだから、今回もそれでいいんじゃないかという方もいますが、ちょっと待ってください。

玉木代表の場合は独身のタレント(ミーハー)さんでしたが、今回は市役所で一緒に働いている家庭持ちの部下です。不倫関係です。

いくら「ラブホでは会話をしていただけ」と言っても、大人の世界ではそれは通りません。ふたりだけで会話をしたかったら、どうしてせめてシティホテルにしなかったのでしょう(それもダメだけど)

ホテル選びも相手に任せたということだから、相当彼に惚れ込んでる。惚れ込んで常識が見えなくなってしまっている。市長が妻子持ちに恋をしたというところでしょう。

もしくは相談にのってもらっているうちに、依存関係になったというところか。

もうちょっと市長に権力があったら、お相手は市長を操り人形のようにできたかもしれません。

玉木代表は外の人との不倫でしたが、今回は同じ役所内での関係。すぐに相手が誰かはわかるでしょうから、今後のお相手との関係や、当然お相手の家族への釈明もあるでしょう。

「何度もラブホには行きましたが、お話しただけです」と妻に言ったら理解が得られるのでしょうか。市長を辞めるのか、お相手が市役所を辞めるのかという、相手の家族を巻き込んだことであることに、まだ市長は気づいていないのでしょうか。

母との変な思い出

何の連脈もなく突然思い出すエピソードがあります。学校のこと、友だちのことはもちろんですが、母とは長いつきあいで、成長期の時代が多いためか不思議なエピソードがぽつぽつと記憶の中で点在しています。

その中のひとつ。中学生頃のこと。

母と街中に出かけたことがありました。すると母はふと、とある映画館の切符売り場に寄りました。どうやら母はそこで切符を売っている同世代の女性と知り合いらしい。その切符売りの女性はおそらく母と話をしたいのでしょう、私に「中に入って映画を見ておいで」と言ってくれました。

映画は大好きでしたので、わくわくと館内に入りました。するとスクリーンいっぱいに現れたのは紋々が体中に入ったヤクザの男たちが大立ち回りをしているシーン。

日本刀が銀幕を走り回り、血しぶきが飛ぶ飛ぶ。

思わずフリーズ。

次のシーンでは、大立ち回りで傷を負った男が布団の上に横たわり、和服の女性が団扇で扇いで何かを言っていました。

ここらでやっとフリーズが溶け、気持ち悪さで頭がくらくらしながら室内をでました。

日本刀と血しぶきがスクリーンに舞っていて、男たちが断末魔の声を上げている光景は今も忘れられません。

ふと隣の映画館を見ると「いちご白書」のポスターが。

「こっちを見たかったなぁ」と思いつつ、母の長い世間話が終るのを映画館の長椅子で待っていました。あの布団に寝ていたのは男は健さんだったのか。もし健さんならヤクザの健さんを見た、最初で最後の映画だったかもしれません。

向田邦子と東京地図

今NHKBSで放送中の「あんぱん」を毎日録画してみています。中園ミホさんは好きな脚本家ですが、残念ながら一緒に放送されている「チョッちゃん」の方が断然面白いので、最初に「チョッちゃん」、次に「あんぱん」という順序で見ることになります。

それでも「あんぱん」が1カ月ほど前から実在の人物が名前を少しだけ変えて登場し、やなせたかしの豪華な交友関係のエピソードが出てくるころからがぜん面白くなりました。

「へー、手塚治虫はやなせたかしを尊敬していたんだ。へー、いずみたくと永六輔はこんな感じだったんだ」と、なかなかおもしろいテレビや演劇やマンガ界のことが描かれています。

たまたま「週刊文春」を読んでいたら、脚本の中園ミホの「あんぱん」に関するインタビュー記事がありました。その中で「のぶ(やなせたかしの妻)の妹の蘭子のモデルは向田邦子」と明かしていました。

そういえば蘭子は「辛口の映画評を書いている」のを見込まれて、雑誌の編集長、八木さんから記事を書かないかと誘われていたっけ。向田邦子も映画評を書いていましたよね。

向田邦子がその映画評の思い出として書かれたエッセイがありました。

とある方が「ゼームス・デンの『イデンの東』」と言っているのを向田さんが聞き、「ゼームス・デン?グレートデンみたいだな。遺伝の東?医学映画だろうか」と思ったが、実はその方は訛があり、ジェームス・ディーンの「エデンの東」だったと書いたエッセイがありました。

向田さんのエッセイの中には東京の地名が出てくることが多いのですが、私は地方に住んでいたので、その地名を読んでもピンときませんでした。東京、青山、新宿、渋谷と言われても、その位置関係がわかりません。

東京に来て日比谷と銀座と新橋は地続きであると知り、「へーーーー」とびっくりしたものです。

エッセイの中で「電車に乗って車窓の外を見ていたら、家の中にくたびれたシャツを着た男の人とライオンがいた」というお話がありました。

なぜ家の中にライオンがいるのかとびっくりした向田さんがそれを載せたところ、「それは私です」と名乗りを上げた方がいて、実際に家の中でライオンを飼っていたことがあると判明するのですが、その電車が走っていたのは中野でした。

今は中野あたりの風景と言えばこんな感じねとわかるのですが、日比谷も銀座も知らない頃の私では中野がどのような街並みなのかさっぱりわからず、たぶん自分の知っている町並みに合わせてこの光景を想像していたと思います。

今は大きな駅の名前を言えば「このあたり」と頭の中に地図を描けるようになったので、もう一度向田作品を地図を描きながら読み直してみたいと思っています。

老年夫婦の熟年離婚の解決法?

いつも持ち出すのが朝日新聞で申し訳ないのですが、デジタル新聞は朝日だけなのでご容赦ください。

この記事は、長野県に住む老夫婦の離婚話を取り上げたものです。離婚理由は身体的暴力も含む夫からのDVでした。

https://digital.asahi.com/articles/AST5V7K1GT5VULLI006M.html?iref=pc_ss_date_article

今回取り上げられたのは夫の特有財産は妻には権利がないかの部分でしたが、裁判所が下した判決は遺産としてもらった時期から相当期間があり、すでに夫婦の共有財産とごっちゃになっているので、他の財産と一緒にして1/2にするようにという判決でした。つまり特有財産としては認められませんでした。

しかし夫は貯金をどこかに移してしまい、先に受け取っている1500万円以上のお金を手にいれることはできませんでした。

この記事では他に70代、80代の妻たちからの離婚請求について書かれているのですが、最後の方はこう締めくくられています。

”老年夫婦の離婚のカギは、子どもの助けが得られるかどうかだ。

 70歳以上ともなると、賃貸住宅の契約自体が難しくなる。パートなどで働くこともままならない。母親を引き取って同居するなど、「住居とお金」の問題を子どもが解決できれば、速やかに離婚が成立しやすいという。

 堀井弁護士は、両親の不仲に悩む子ども世代にこう助言する。

 「高齢だから本気のはずがないと放置すると、不仲が深刻化しかねない。両親の話を聞き、離れて暮らすしかないと判断したときは手助けしてあげてほしい」”

「親の住居とお金」を解決してやれと。

ここで私は非常に引っかかりがありました。子ども世代だって子どもの教育費や自分の生活だけで精一杯のことが多い。そこに親に金銭的援助やら一緒に住もうという提案をするのは土台無理な話ではないだろうか。

ましては親が不仲ということは、機能不全の家庭で育てられた子どもたちで、自分自身がまともな家庭環境を与えてもらえなかった子どもたちです。

そんな子どもたちに「あなたたちは幸せな子ども時代は過ごせなかった。その原因を作ったのは親で、その親を助けろ」とはどうも納得しがたいアドバイスです。

「親と自分は違う」という精神的な自立ができている人ならやるかもしれませんが、一時の涙で「一緒に住む?」になったとしたら、その後は悲劇です。お金も家もない親を引き取って、しかも10年20年介護を加えた面倒をみるとなったら?

とんでもない話です。

親が子どもを育てるのは産んだのは親なので当然ですが、子どもが自分の生活まで犠牲にして親に20年も尽くすのは考えられません。

と思っていたら、この記事のコメント欄に「離婚問題について扱った記事ですら、なお「家族はお互い支え合うべき」という前提がついて回ること自体に、日本社会の家族主義の根深さを感じます」とありました。当然です。

たぶんこの記事を読んだ、同様の問題を抱えていない(熟年離婚の当事者)以外は同じように考えていると思います。

離婚届を書いて脅すモラハラ夫

私が結婚してから2カ月ほどたった頃。この頃はモラ夫のモラ調教が俄然激化したあたりでした。繰り返される無視と怒号、嫌味や人格否定に毎日に、とうとう家を出ました。

と言っても出た先にいるのは毒母。結婚2カ月で実家に戻ってきたと知ればモラ夫以上の罵詈雑言が待っているというのはわかっています。だから実家に帰ったと言っても長くいるつもりはありませんでした。

夫のモラハラを話した友人から「どーんと実家に帰っちゃいなさい」と背中を押されたことが実行したきっかけではあります。

実家に帰っても何も元夫のことは言わず、一晩泊っただけで帰ったのですが、家に戻ってテーブルの上にあったのは、夫の署名がすでに書いてある離婚届でした。

さすがモラ夫。やることが私よりもひとつもふたつも上です。私が離婚する気などはないことはとっくにお見通しでした。背筋がぞぉーっとした私はその離婚届けを破ったのですが、その時の私に言ってやりたい。

「その離婚届、取っておいて」

以前、とある弁護士さんから「離婚届に署名がしてあるなら、取っておいて出したいときにさっさと出せばよい」と言われました。

モラ夫の「離婚する」はほぼ脅しなので、実際に離婚しようとすると「本気じゃなかった」「やり直したい」というのが99%です。モラ夫が脅しのために離婚届にサインをして突き出すのも当然攻撃のひとつです。

とはいえ、今ググってみると「勢いで離婚届に署名捺印をしたが、今は離婚の意思がない場合は弁護士に相談を」と、どの弁護士事務所のHPにも書いてあります。

役所で署名捺印した離婚届を出すと離婚は成立します。ただ、これをなかったことにはできませんが、裁判所を巻き込むと無効にできることはできるのだとか。

私はそんなムツカシイことをするくらいなら、もう一度結婚したらよいのではないかと思うのです。だけど片方が結婚したくないと言うならば、それは離婚するしかないのでは?

だーかーら、離婚届なんてものは勢いとか脅しで書くもんじゃないって!

ちなみに離婚の不受理届は以前は半年が有効期限でしたが、今は一度出せば取り下げるまで有効です。いかに不受理届が沢山役所に出されているか、ですね。(役所も半年ごとに出される不受理届を受付けるのが面倒だから永久にしたのではないかと私は勘繰ってる)

高額オーブントースターを買ったその後

こちらで書きました高額オーブントースターですが、ここで書いたとおりアマゾンプライムセールで買って2カ月経ちました。

買った結果どうなったかということをそれこそ「忖度なく」リポートです。

オーブントースターはパンを焼くだけのものと思っていましたが、暑い夏、トーストを食べることはあまりなく、どちらかというと買ってきたから揚げとか天ぷらのようなものを温めることの方が多かったです。

そのため、この2カ月パンを焼いたことが少ないのですが、それでも数回焼いた感想としては、「試してランキング」での感想、「世界が変わった!」と言うほどでもなく、ごく普通に焼けていました。

ただ、「冷凍したパンが美味しく焼ける」では、そもそも以前は冷凍したパンは一定時間常温解凍してから焼いていたので、冷凍したものをそのまま焼くことはなかったため比べようがないのですが、ともかく初のパンを凍ったままこのオーブントースターで焼いてみました。

ところが冷凍した厚切りパンをこれで焼こうとすると

6分かかる

なぜオーブントースターがこんなに高額なのかと言えば、焼くものによって時間がプログラミングされていて、数十秒焼くとスイッチがいったん切れてお休みタイムになる。するとまた数十秒庫内が明るくなり、またスイッチが入る。この繰り返しだからです。

そうなるとどうなるかお判りのとおり

やたら時間がかかる

前のトースターが30秒で焼けていたのに、6分もかかる。朝の忙しい時、家族の人数が多い時はパンを焼くのに6分もかけられないと思うんですよね。。庫内は食パン2枚が並ぶくらいの大きさです。

そして揚げ物を温めようとするとこれまた時間がかかる。温めて熱々を食べようとするなら、逆算してスイッチを回さなければなりません。あれこれとキッチンとテーブルを行ったり来たりしているうちに、せっかく温まったものが冷めてしまいます。

ただ、出来上がりは上々。サクサクとして大変よろしいです。

焼き芋が美味しく焼けるとのことですが、20分ー30分かかる。電気代も考えるとドンキで買ってきて切って冷凍しておいた方がよさそうじゃない?。。

もう長く生きるわけではないので、残された時間を充実させようと買ったオーブントースターですが、コスパを考えると、どーかなー?

これから寒くなっていくので、利用する機会も増えるでしょうから、買ったからには存分に使って行こうと思います。そうでないと買ったことに後悔するから。

操作はシンプルでとてもわかりやすいです。中古品も出ているみたいなので、もし欲しい方がいましたら、そちらでお試ししてもよいかもしれません。

タダより高いものはない

こちらの続きです。

催眠商法と疑っては見たものの、高価なものを売りつけられるわけでもないので行き続けてみたら昨日、「今日は新しく出た化粧品をご案内します」と。

いつもの健康談義をしているおじさんが、いかにも怪しげなビンに入ったものを掲げて「ちょっと手にのばしてみてください。すごーくのびます」と言いながら、参加者の手に数滴たらしていきます。

「ほら、のびるでしょーー??」と言うと前列のおばあさま方が「うんうん」と頷く。

70代を過ぎた女性たちは「相手に不快感を与えないような対応をする」ことを叩きこまれていますから、のびようがのびまいが、手に垂らしてくれた人に満足をしているという表情を見せます。

ここで「のびないですけど」などという人はまずいません。この会場で主催者にNoを言うような人はそもそも来ませんし、心の中で「どこまで本当やら」と思っていても、そこは大人なので顔にも口にも出しません。

よって会場全体はこのとてもよくのびる(普通です)商品をよい感情で受け止めます。

この商品は3千円から4千円台で、こういったところで売るにしてはお手軽なお値段です。これが2万も3万もしたら誰も買わない。

「いつも電位治療器をタダで使わせてもらっているので悪いわ。1本くらい買ってあげようかしら」と思わせるのに丁度よいお値段です。

ここで書きましたが、人間は何かをしてもらったらお返しをするという習性があります。これはお願いしてやってもらったわけではなく、相手が勝手にやった場合も同様の効果があります。

特にこちらから「ください」と言ったわけではなく、相手が勝手に「あげます」と物を渡された瞬間「お返ししなくては」と思う気持ちが働くのだそうです。

私は年をとって図々しくなったので、お返しは笑顔で充分と思うのですが、そうではない年の取り方をしている方もいて、「この次は何かお返しを」と思う律儀な人もいます。

タダを売り物にして人を集めて、結局はこうやって商品を売るのが催眠商法。それは高額な医療機器や羽毛布団だけではなく、3、4千円のお手軽な品物でお返ししたい方たちに向けたマーケティングのように思えます。

自分がその場にいるのが恥ずかしい

ジムで一緒の50代の女性が「膝が痛かったけど、接骨院とエナジーで治したわ」とロッカールームで話していました。

はて?エナジーとは?

「エナジー」とみんなが行っているのはどうやら電位治療器で、椅子の上に敷かれた座布団のようなものに低電磁波を流し、体の不調を軽減するものらしい。

行った人の話によると、肩こりや関節の痛みやら不眠やら、とにかく「何にでも効く」というのがうたい文句のようです。

「えー、催眠商法じゃないのー?高いものを買わせるんでしょー?」と言うと、「器具を売りつけるわけではないのよ。何年も行ってる人が何人もいるけど何も買ってない。なんとなく体の調子がよくなるので行ってる」とのこと。

何も買わせないのにその会社、どうやってその場所代や人件費が賄えるんだ?と疑問でいっぱいなまま、捜索意欲満々で行ってみました。

場所はとあるビルの地下。「健康教室」みたいな桃太郎旗が立っていて、ますます怪しさ百倍。

中に入るとずらーっとパイプ椅子が並べられていて2、30人が座れるようになっていました。そしてそのパイプ椅子の上には電位治療器が置かれていて、高齢者が座っていました。

あー、あのパンとか卵とかで釣って布団とか買わせるやつだー。

結局その椅子の上に置いてある座布団みたいな電位治療器の上に20分座り、その間、その会社の人のどこまで本当かわからない健康談話を伺うというものでした。

「〇〇さん、膝に水が溜まってたの治ったんだよね」と前列に人に呼び掛けると、おばあさんがかわいい声で「ハイ」と答える。このおばあさんはサクラではなく本当に私の顔見知りなのです。

「××さん、ずっと医者に行って治らなかった坐骨神経痛が治ったんだよね」というと、これまた腰の曲がったおじいさんが「うんうん」と首を縦に振る。

怪しさ満点なのだけど、何しろジムの顔見知りが沢山来ているので、騙されていますという雰囲気がない。だがしかし

「こーんな怪しさ満点のところに座っているのが恥ずかしーーー」

「外から見たら催眠商法に騙されている高齢者に見えるのが恥ずかしー」

「いつも『あのおばあさん、騙されているんだわ』と思っていた高齢者のひとりになっているのが恥ずかしー」

ともあれ、この催眠商法みたいなところで20分ほど暖かい座布団に座っていたら、日中の疲れが出てこっくりと居眠りモードになりました。何も買わないので商法には引っかかりませんが、催眠にはひっかかりました。とさ