地元の映画愛好家による映画鑑賞会に参加したのは、鑑賞する映画が「リンドグレーン」だったからです。
子どもの頃、リンドグレーンの本が大好きでした。リンドグレーンの一番有名な作品は「長くつ下のピッピ」だと思いますが、私が一番好きなのは「名探偵カッレ君シリーズ」です。
この本は何度も図書館から借りて読みました。ラスムス坊やがお腹が空いて「しょっぱいハム」を想像するシーン、エーヴァ・ロッタが男の子に混じって活躍するのをわくわくしながら読んでいました。
そのリンドグレーンの半生を描いた作品とあっては、見ないわけにはいきません。鑑賞券を買って、空いている席に座りました。
敬虔なキリスト教徒の一家で両親ときょうだいに囲まれて育ったアストリッドですが、この静かで何もかも従順に囲いの中にいる田舎の暮らしに次第に不満を抱くようになります。
そして18歳で勤めた新聞社で49歳の社長と不倫関係になり、男の子を出産します。この当時はこういった関係の子を国内で産むことができず、デンマークに行って出産することになりました。生活のために働くことと子育てを一緒にすることができず、子どもは里子に出され、その子どもと会うために、ストックホルムとコペンハーゲンを毎週往復します。
幸い子どもの里親はとてもいい人だったのですが病気になり、子どもの面倒を見られなくなったので、アストリッドが引き取り、実家で育てることにします。
家族からも、地域からも白い目で見られる出産でしたが、最後の方では一番厳しかった母が孫を抱いて教会へ行き、堂々と通路を歩くシーンが挿入されます。
その後、アストリッドはリンドグレーンさんと結婚し(またも不倫!)、子ども向けの本を出版し続けます。
映画は特に妊娠から出産、子どもとの別れ、周囲の冷たい目の中で生きなければならない苦難に長い時間を割いて描かれており、場内にはこのシンママに同情的な雰囲気が漂うのですが、ちょっと待ってください。
小さな村で不倫関係になったら、そりゃー白眼視されるでしょうよ。これは20世紀の出来事ですが、もし現代でこのようなことがあったら、やっぱり同じではないでしょうか。どうします?自分の夫が若い子に手を出して妊娠させちゃったら。
コミュニティには秩序というものがあります。何もかも自分の思うがままに行動して秩序を乱したら、その報いがあるのは当然です。
別に強姦されたわけではありません。しかも映画ではむしろ彼女の方から誘っている。その後、辛い日々を送ることになってしまったのは、すべて相手の男性だけの責任ではないでしょう。
生まれた子どもや産んだ人には罪はない。。。ですか。確かに子どもには罪はないけれど、夫を若い子に盗られて、子どもまで生まれてしまった妻の立場はどうしてくれるのでしょう。さらにアストリッドはこれを二度も行っています。
映画は少女の頃のアストリッドの少し変わった性格や行動も見せてくれるのですが、後先考えない突っ走り方を見ると、たぶん彼女は発達障害だったのではないだろうかと思ってしまいました。
だからと言って彼女の残した偉業が傷つくことも汚れることもまったくないのですが、私はなんだかこの恣意的な映画の作りに疑問ばかりが残ってしまいました。