ブランドを知らないと

昨年のことですが、ちょっとフォーマルな席に出席しました。参加している方たちの服装はみんなスーツかセミフォーマルです。その中にひとり、ワークマンのような作業服をを着た人がいました。

「なぜこの席にあの服を?」

どうみても清掃のおじさん。なぜ清掃のおじさんがこの席にいるのかわからないまま会は終了し、参加者は個々にエレベーターに乗って帰っていきました。一緒に出席していた友人に、「あの人、なんでこの席にあの恰好なのかしらね?」と聞くと友人は

「あの人、すごい時計をしてたの、私見ちゃった」と言います。

「へ?!」

時計は時間がわかればいい。海外旅行の時は失くすと大騒ぎになるので100均の時計をしていく私は、時計はセイコー、シチズン、オメガ、ロレックスくらいしか知りません。友人が言うには〇〇〇(忘れた)というブランドで、その人が身に着けていたものはたぶん200万円を下らないだろうとのこと。

「に ひゃく まん えん!!!」

この世に200万円の時計があることは知っていますが、どのようなものかは知りません。宝石とか散りばめられているのか、いったいどういう時計がこの値段なのか。

「着ていたのは若い人たちに人気のブランド〇〇〇(忘れた)よ。そう高いものではないけれど、あの年齢であれを着てるってなかなかオシャレ」

えーー、ワークマンかと思った。いや、ワークマンだってブランドと言えばブランドだ。それにしても彼女、よく知っている。

ブランドを知らないと高級ブランドもワークマンになってしまう。ブランドで固めても、知らない人の前ではただのワークマン。これは知らない方が悪いのだろうか。もし知っていたら、あの人は清掃のおじさんではないと一目でわかる分、人を見る目があるということになるかもしれない。

身に着けている本人は気持ちよく着られるからそれを選んだのでしょうし、格式ばった席にカジュアルなものを着てくるとは、もしかしたら結構すごい人なのかも。その席は私にとってはものすごく緊張するような場所だったのですが、その人にとってはなんてことない場所だったのかも。

それにしても「に ひゃく まん えん!!!」の時計、ちゃんと見ておけばよかった。