向田邦子と東京地図

今NHKBSで放送中の「あんぱん」を毎日録画してみています。中園ミホさんは好きな脚本家ですが、残念ながら一緒に放送されている「チョッちゃん」の方が断然面白いので、最初に「チョッちゃん」、次に「あんぱん」という順序で見ることになります。

それでも「あんぱん」が1カ月ほど前から実在の人物が名前を少しだけ変えて登場し、やなせたかしの豪華な交友関係のエピソードが出てくるころからがぜん面白くなりました。

「へー、手塚治虫はやなせたかしを尊敬していたんだ。へー、いずみたくと永六輔はこんな感じだったんだ」と、なかなかおもしろいテレビや演劇やマンガ界のことが描かれています。

たまたま「週刊文春」を読んでいたら、脚本の中園ミホの「あんぱん」に関するインタビュー記事がありました。その中で「のぶ(やなせたかしの妻)の妹の蘭子のモデルは向田邦子」と明かしていました。

そういえば蘭子は「辛口の映画評を書いている」のを見込まれて、雑誌の編集長、八木さんから記事を書かないかと誘われていたっけ。向田邦子も映画評を書いていましたよね。

向田邦子がその映画評の思い出として書かれたエッセイがありました。

とある方が「ゼームス・デンの『イデンの東』」と言っているのを向田さんが聞き、「ゼームス・デン?グレートデンみたいだな。遺伝の東?医学映画だろうか」と思ったが、実はその方は訛があり、ジェームス・ディーンの「エデンの東」だったと書いたエッセイがありました。

向田さんのエッセイの中には東京の地名が出てくることが多いのですが、私は地方に住んでいたので、その地名を読んでもピンときませんでした。東京、青山、新宿、渋谷と言われても、その位置関係がわかりません。

東京に来て日比谷と銀座と新橋は地続きであると知り、「へーーーー」とびっくりしたものです。

エッセイの中で「電車に乗って車窓の外を見ていたら、家の中にくたびれたシャツを着た男の人とライオンがいた」というお話がありました。

なぜ家の中にライオンがいるのかとびっくりした向田さんがそれを載せたところ、「それは私です」と名乗りを上げた方がいて、実際に家の中でライオンを飼っていたことがあると判明するのですが、その電車が走っていたのは中野でした。

今は中野あたりの風景と言えばこんな感じねとわかるのですが、日比谷も銀座も知らない頃の私では中野がどのような街並みなのかさっぱりわからず、たぶん自分の知っている町並みに合わせてこの光景を想像していたと思います。

今は大きな駅の名前を言えば「このあたり」と頭の中に地図を描けるようになったので、もう一度向田作品を地図を描きながら読み直してみたいと思っています。