タダより高いものはない

こちらの続きです。

催眠商法と疑っては見たものの、高価なものを売りつけられるわけでもないので行き続けてみたら昨日、「今日は新しく出た化粧品をご案内します」と。

いつもの健康談義をしているおじさんが、いかにも怪しげなビンに入ったものを掲げて「ちょっと手にのばしてみてください。すごーくのびます」と言いながら、参加者の手に数滴たらしていきます。

「ほら、のびるでしょーー??」と言うと前列のおばあさま方が「うんうん」と頷く。

70代を過ぎた女性たちは「相手に不快感を与えないような対応をする」ことを叩きこまれていますから、のびようがのびまいが、手に垂らしてくれた人に満足をしているという表情を見せます。

ここで「のびないですけど」などという人はまずいません。この会場で主催者にNoを言うような人はそもそも来ませんし、心の中で「どこまで本当やら」と思っていても、そこは大人なので顔にも口にも出しません。

よって会場全体はこのとてもよくのびる(普通です)商品をよい感情で受け止めます。

この商品は3千円から4千円台で、こういったところで売るにしてはお手軽なお値段です。これが2万も3万もしたら誰も買わない。

「いつも電位治療器をタダで使わせてもらっているので悪いわ。1本くらい買ってあげようかしら」と思わせるのに丁度よいお値段です。

ここで書きましたが、人間は何かをしてもらったらお返しをするという習性があります。これはお願いしてやってもらったわけではなく、相手が勝手にやった場合も同様の効果があります。

特にこちらから「ください」と言ったわけではなく、相手が勝手に「あげます」と物を渡された瞬間「お返ししなくては」と思う気持ちが働くのだそうです。

私は年をとって図々しくなったので、お返しは笑顔で充分と思うのですが、そうではない年の取り方をしている方もいて、「この次は何かお返しを」と思う律儀な人もいます。

タダを売り物にして人を集めて、結局はこうやって商品を売るのが催眠商法。それは高額な医療機器や羽毛布団だけではなく、3、4千円のお手軽な品物でお返ししたい方たちに向けたマーケティングのように思えます。