家を半分売ることも可能

避難応援プロジェクトの中で住宅ローンの残債が残っているのだが、離婚の時はどうするのかというご質問を受けることがあります。その時は持ち分が100%夫名義ならば夫の負担となります。ただ、悩ましいのは妻が連帯保証人になっている場合です。

夫がローンを支払わなければ連帯保証人の妻へ銀行は取り立てに来ます。

こういった面倒な話はケースバイケースになりますので、プロジェクトの中でお話することになります。避難応援プロジェクトは「心のケア」ではなく、どうやったら効率的に安全に離婚ができるかを目指すものですから、「調停委員から和解を勧められているんだけど」といった話も出てきますが、そこは弁護士が同席しているプロジェクトですから、もっともそのケースにふさわしいと思われる解決策をお話しています。

さて、昨年朝日新聞にこのような記事が出ていました。

“家を追い出され、離婚も拒絶 「呪いの館」に居座った妻へ夫の反撃”

https://digital.asahi.com/articles/ASSDC3QMXSDCULLI009M.html?pn=12&unlock=1#continuehere

タイトルのケースについては、問題のある妻との離婚で、妻が家を出て行かないというお話でした。そしてそれに続いて紹介されたのは夫からのDVで離婚したい妻のケースです。

”「夫と共有名義の家があって困っている。自分の持ち分を買い取ってほしいのですが」”

”夫婦は約20年前にこの家を購入し、その際に出した金額に応じて約4割の持ち分を妻側が所有していた。ただ、通常通りに買い取ると、所有権移転の情報とともに女性の新しい住所も登記簿に掲載され、夫にばれてしまう。

 ”そこで住所を不記載にして売買できるよう、司法書士を通じて国分寺市に「DV等支援措置」を申請。その後、同社が女性の持ち分を400万円で買い取った。”

さらに夫のもとを訪ね、持ち分が妻から同社に移ったことを説明。それを買い取って家に住み続けるか、夫の持ち分も同社に売るか、選択を迫った。

 結局、買い取り資金がないとして夫も売却を望んだため、約6割の持ち分を500万円で取得。同社は2人から買い取った持ち分を、新たな入居者にまとめて転売した。”

家の半分の権利が売れるのかと疑問に思った方もいると思うのですが、少なくとも東京ではありうる話です。私は相談員をしていた時に、「遺産相続で親の家を半分ずつ弟と分けて共有名義にしたところ、弟は自分の分を競売に出してしまった。自分も競売に参加して買い取ろうとしたが、弁護士から『そんな半分の権利なんて買う人はいませんよ』と言われ、少ない価格で参加したら別の業者に落とされてしまった。今、家の名義はその業者と半分ずつ。今後その業者から買い取りを迫られるのではないか」というご相談を受けたことがあります。

法律的なことなので、担当の弁護士への相談に切り替えましたが、おそらく実際その業者は半分の買い取りを迫ってくるでしょう。

こういった訳あり物件を専門に行う業者もいるようです。この記事では「ネクスウィル」という会社が紹介されていました。なかなか買い手や借り手のつかない訳あり物件の仲介をするという会社だそうです。

このパターンはいい方にも悪い方にも考えられます。↑のケースが妻が家を出て自分の分だけを売った場合ですが、妻子が残っていて夫が売る場合もあります。

今まで「夫が勝手に家を売るのではないかと心配」という相談には弁護士も「人の住んでいる家を売るなんてできませんよ」とお答えしていたと思いますが、そうでもないこともあるようです。

脅かすわけではありませんが、こういうこともあるという情報だけは提供しておきたいと思います。