中国の方は教育費に糸目をつけず、ボロボロの家でも子どもに家庭教師をつけるという話をずーっと前に聞いたことがあります。中国が今のような経済状態になる前の話です。
教育をつけた子どもは出世し、何倍にもなって戻ってくるというのが理由でした。今を見ず、将来を見て投資をしようというのが中国なのだという話です。
さて、日本で少子化が叫ばれるようになってずいぶんたちますが、街頭インタビューで子どもを産まなくなった理由を尋ねると「教育費にお金がかかる」という答えが多く聞かれます。
確かに私も教育費にはお金をかけましたが、その分量は今の東京の子どもたちの環境とだいぶ違います。
私は15年前ほど前に地方で子育てをしたので、今のあちらの状況と違うかもしれませんが、小学生で塾に通う子はほとんどいませんでした。塾は中3の部活が終わる夏休み頃から通い、高校受験が終わると終了。
大学入試に至っては、塾にも予備校にも通わない(そもそもそれがない)のが普通で、ではどうやって受験に臨むのかと言えば、学校が補習といった形で対応してくれました。
子どもの担任の話では4月には各高校の校長が教育委員会に呼ばれ「〇〇高校は×大に何名、△大学に〇名」とノルマが課されるのだそうです。
なので進学校はそのノルマ達成のために死に物狂いになるのだとか。
東京の教育熱は異常だなと思うことがあります。小学校からの塾通いは普通、駅前の塾では21時過ぎに子どもたちがぞろぞろと建物から出てきます。
私の家のお隣宅では3歳違いのきょうだいがそろって受験の時にはひとり10万円、ふたりで20万円を毎月塾代に支払っていたそうです。他の夏期講習、冬期講習と別途にかかり「考えると頭がくらくらするから考えないようにしている」と言っていました。
私も地方では珍しく子どもが大学受験の時に半年塾に通わせました。「学校の補習でいいんじゃない?」と言うと「普段の授業と同じ先生に習って成績が上がると思えない」という回答で、「なるほど」と思いましたが、なんだか変だ。
あんたが普段の授業をまじめに受ければいいんじゃね??
この屁理屈になんとなく納得して半年間塾に通わせました。だから割と教育熱心な親の範疇だったと思います。
教育費は家の家計を極限まで圧迫します。東京では1千万超えの収入が珍しくなく、教育費に1カ月20万30万とかける家も普通にあります。2歳、3歳からの英語スクールも珍しくありません。
そうなると収入が多くないのに、教育費にお金をつぎ込み、完全に家計を圧迫してしています。本来はそのために子どもが生まれた時から貯金をしているはずなのですが、大学入学前に貯金を使い果たしたという話もあります。
振り返ってなぜ私が子どもの教育にお金をかけたのかと今考えると、半分は自己満足だったのかなと思います。もし子どもが思うような進路を歩めなかったとき、「あれだけお金をつぎ込んだんだから」と自分を納得させるためにお金を出していたような気がします。
もしあそこでケチっていたら「あの時ケチらなければ」という後悔が死ぬまで続くようで出していたような気もするのです。
地方で子どもを育てて今東京で暮らしていると、本当に教育に関する意識がまるで違うのを感じます。ママ友の家でこれくらいのお稽古事をしているのだからと争っているわけではないけれど、取り残されている、子どもを粗末に扱う気がして他の家と同等の教育をと、つぎ込んでしまっているのではと思います。
よその家と自分の家では収入額が違うのです。パワーカップルと呼ばれる夫婦ともに高額所得の家と、妻がパートの家では所得が違うのです。であれば、教育費もよそと同じような額を出せないのです。
そこを見失うと、「上の子どもは大学を中退し、下の子はFランクの大学を卒業して今派遣。残ったのは教育ローンだけで老後資金はゼロ。私たちは何をしていたのだろうか」ということになりかねません。