2学期が終わり、我が家に子どもたちを招いてのクリスマスパーティが、その年最後のイベントでした。年が明けたら3学期。それぞれの家庭で過ごすお正月。そしていつものような新学期が始まるはずでした。でも、新学期にカスミちゃんは来ませんでした。
「カスミちゃん、転校したって」
仕事から帰った私に、半べそのような表情の子どもが言いました。
「どこに?」
「わかんない。先生も知らないって」
子どもが転校する先を先生が知らないわけないだろうとは思いましたが、ともかくカスミちゃん家族は行き先がわからないまま、どこかへ行ってしまいました。ママ友に聞いても「突然居なくなったんだって」としかわからず、本当にカスミちゃん一家は消えてしまいました。
その後、たまたま担任の先生とお話する機会があったので、カスミちゃんの行方を聞いてみましたが、「事情があって言えないの」としか言いませんでした。
「みんな泣いたのよ。クラス中が泣いたんだ」
肩を落とした先生が下を向きました。
クラスの人気者だったカスミちゃんは、突然消えてしまいました。
10年とちょっとしか生きていないのに、カスミちゃんは大きな試練の荷物をすでに抱えていたのです。