酔うと化け物になる父がつらい

このタイトルを見たときはびっくりしました。私の「誰のおかげでメシが食えると思っているんだ」と言っていた父は、酔うと化け物というほどではないと思いたいのですが、酒癖に関してはこの本の父親よりひどかったです。父はいわゆる「泣き上戸」でしたので、酔って帰ってくると大声をあげて泣きながら吠え散らしました。

「酔うと化け物になる父がつらい」

という本の中に出てくる父親は、へべれけに酔って正体を無くしますが、泣きながら吠え散らすよりマシだなと思ってしまいます。この本のお父さんは2日に一度酔っ払いますが、それよりも常に父の友だちが家に来て徹夜麻雀をする、一家で過ごす時間がない、そちらの方が作者にとって耐えられないことのようでした。母は接待に疲れ果て(たぶん酒代で家計は厳しかったと思う)、時々わけがわかなく怒鳴り散らす、宗教にすがるも結局自殺。父の周りの人たちは「お父さんの気持ちをくんであげたら?」「あなたがしっかりして」と子どもに親の面倒をみろと言い募る。

作者は自己肯定感などは木っ端微塵にふっとんだまま成長、自滅的性格を形成し、不幸道まっしぐらの生活を送るようになりました。

それでもそのお父さんが亡くなった時、作者は涙も流しますし、後悔もするのでまだ人間味があるかもしれません。私は父が亡くなった時、平均寿命以上を生きたせいもあり、泣きもしないし後悔もしませんでした。むしろ晩年は施設で寝たきりになった父を介護する母の「お父さんはいつまで生きているつもりなのか」「早く死んだらいいのに」「(大病をした)あの時死んでくれた方よかった」と言う愚痴を延々と聴き続けなくても良いと言う安堵感の方が強かったです。

母は父が亡くなった後は、しおらしく「お父さんの遺族年金のお金で生活ができる」などと言うこともたまにありますし、父の遺影を食卓に置いてみたりして、世間が喜ぶ演出をしてみせますが、大抵は「あの時は大変、この時はひどかった、お父さんのせいで、お父さんのせいで」と繰り言を言い続けます。「施設や近所の人たちからは、『あなたみたいに一生懸命介護する人は見たことがない』ってよく言われた」と言うのも毎度聞かされます。

私ですか?当然無視ですよー。相槌なんか打とうものなら延々と褒め称える言葉を要求しますもん。

そんな私に母は(罪悪感を持たせようと)ため息をついて、二人は無言の時間を過ごすのでした。