その昔、従妹の結婚式にお呼ばれしたことがありました。従妹が住むのは父の実家でもある山奥です。披露宴は宴会旅館のようなところで、50畳以上はあろうかという広い畳の部屋いっぱいにお膳が並んでいました。
私の名前が書いたお膳を見つけて座ったのですが、一緒に招かれた母がおろおろと私にやってきて「私の席がないんだけど」と言います。「え?」と不思議に思って一緒に探したのですが、やはりない。
叔父に「母の席がないんですけど」と言うと、
「女の席はないよ。披露宴の時は酌婦をやって、それが終わったらちゃんと料理は用意してあるから」と言うではないですか。
さすがに私も母もびっくりしたのですが、母と同じ立場のおばたちは、当たり前のように宴会の用意を手伝っています。同じおばでも父の兄妹は席があり、いわゆる「嫁に来た」女性は酌婦なのだそうです。
「早智子さんは血が繋がっている大事な人だからお膳を用意してあるんだ」
嫁は目上でも他人、子どもでも血が繋がっていれば大事な親族。ここまではっきりした区別をされたのは初めてで、村で暮らしたことのない私と母は口をあんぐりするばかり。
そういえば、まだ元夫と夫婦をしていた頃、あの家はよく親族が集まってくる家でした。ただ、嫌われ者の義父の親戚は見たことがなく、集まるのは義母の方だけ。6人きょうだいの義母ですが、それがとても仲がよく、GW、お盆はいつも大賑わいでした。
よく親族が集まったりするのを嫌う人が多いですが、この親戚の方々はとてもよい人たちだったし、親戚が来ると夫は機嫌がよく外面なので、嫌な思いはしたことがありませんでした。それでも大勢の親戚の中にいるとふと、「この中で血が繋がっていないのは私だけなんだなぁ」と思うことはありました。
子どもは私の子だけど、夫の血も混じっている。だからこの血族の一員。一滴の血も混わらない私だけがこの大勢の中で他人。ヨメという立場は大きなイエという血族の中で、ひとり孤独な立場の人間なんだなぁと毎度思っていました。
それが相続となると、今は法改正によって1/2が配分されるようになりましたが、これとてそのまま適用されているかは疑問です。
私は相談員でしたのでありとあらゆる相談を受けてきましたが、相続に関することも多くはありませんがありました。その中身は概ね兄、弟との遺産配分のもめごとでした。
>>>続く