部屋を片付けようと、断捨離を決行することになりました。捨てるか捨てないかは「使うか使わないか」ですが、「使わないけど捨てられない」ものは生きていた時間が長かった分、分量が多い。特に子どもに関するものは中々捨てられません。
子どもの古着は東京に転居する際に、職場の同僚に引き取ってもらったりしましたが、学校で作った工作や図画が「これを捨てたら無くなってしまう。今捨てなくてもいいんじゃないか」と、いつも「次に考える」の箱に入ってしまいます。
田舎の家から都会の集合住宅に転居して、住居の広さが半分になりましたから、あらかたは片付いたのですが、どうしても捨てられなかったのが「子どもふたりのランドセル」でした。
狭い住宅の中に10年間、ランドセルは置いてありましたが、きっかけになったのは市役所の「古いかばん(ランドセル含む)を集めます」という市報記事を見つけたことでした。子どものランドセルをゴミ捨て場に持っていくことができなかったので、「市役所に預ける」という免罪符があるならば、これを利用しようと集積場に持っていきました。それでもなかなか名残惜しくて、ふたつのランドセルを並べて写メしていたところ、市役所の方が「これはアフリカなどに送られるんです。日本のランドセルは人気で、喜んで使ってもらえますよ」と言ってくださいました。
そう言えばテレビのバラエティか何かで、日本のランドセルがアフリカで人気だと言っていたっけ。遠くまで地平線のアフリカの平原で、このランドセルを背負ったアフリカの人たちが歩いている姿が浮かびました。「よろしくお願いいたします」と係の方に頭を下げ、ふたつのランドセルを撫でて、さよならしました。
6年間使ったものだから、かなりよれているのに、「大切にします」と言っていただけて、言葉って魔法だなと思いました。
その晩、通っているジムの大浴場にふたりの年配の方が湯船に浸かっておしゃべりをしていました。
「断捨離しようと思うんだけど、なかなか進まなくてさー」
「そうそう、コンマリが、捨てようかどうしようか迷っている物をこうやって胸にあてて、ときめかなければ捨てればいいんだって言ってた」
「うん、知ってる。だからこうやって胸にあてるんだけどさー、みーんなときめくのよ」
「そうなのよ!みんなときめいちゃうのよ!」
「ときめくのよねーー!」
ふたりで大きく頷きあい、合意されました。
そうなのよね。子どものものは、思い出という物語があるぶん、みんなときめいちゃうのよ。