モラル・ハラスメントを知っていますか?

ある日曜の朝、朝食が終わった後、夫が話し出す。

「今日の夕食は外で食べる」私はほっと肩をなでおろす。我が家の日曜は普段と同じ。「腹が減って寝ていられない」 夫のために6時半には朝食を出す。焼き魚1匹、卵料理、肉料理、煮物、和え物、納豆、漬物、味噌汁等々。残り物は食べないし、 煮物は味が染みないので前日からの仕込みになる。夫はその日の気分によって好きなものだけ食べる ので、すべての品が必要なのである。残ったものは私と子供たちの朝食になる。

朝食を終えると夫はまた布団に入って寝始める。1週間たまった家事が終わるのは11時を回った頃。12時きっかりには昼食を食べなければならない 夫のために準備を始める。昼食を終え、後片付けが終わるのは1時。そこから3時までの2時間が私の1週間で 唯一の自由時間となる。でも今日は外食だ。5時まで自由時間になる!夫は日曜は5時に夕食をとると決めている。 なぜなら自分が育った家がそうだったから。だが5時になっても夫は腰を上げない。不安がよぎる。どうしたんだろう・・・。

突然夫がボツリと言う。

「メシはまだか」

血が逆流して手足が冷たくなるのがわかる。「だって今日は外で食べるって言ったじゃない」 そう言えばいいと普通の人は思うだろう。でもモラハラ夫の場合、それは敵の術中にはまることなのだ。

「言わねぇっ!!」

目をむきだして叫ぶのが見える。夫はこの時を待っていたのだ。私がオロオロと血の気の引いた顔に なるのを見るために1日中待っていたのだ。

夫は家が壊れそうになるほどの音を立てて戸棚を開け、カップラーメンにお湯を 入れる。その音は長い沈黙の始まりを告げる合図になる。今度の沈黙は何週間になるのだろうか。まるで私が透明 人間にでもなったように無視を続ける日は何ヶ月続くのだろうか。。。

冷蔵庫の中を探れば1食くらい何か作れるでしょう、そう言われるかもしれない。でも夫が欲しているのは食事ではない。夫が欲しているのは青くなって うろたえている私の姿を見ること。食べてと出したところで夫は見向きもしない。それは20年間一緒に暮らしてきた私だけが知っていること。

別の朝、いつものように魚を焼く。夫はじゅうじゅうと音を立てている魚しか食べない。いつものとおりタイミングを計って食卓に出す。リビングの隅で夫は新聞を 読んでいる。「ご飯できたわよ」背中に話しかけても返事がない。

「ご飯、できたよ」しばらくして話しかける。夫は新聞から 目を離さない。

どうしよう、魚が冷めてしまう・・・・。

魚が冷めた頃、夫はテーブルにつき、魚の上に手をかざし、 温度を測るふりをした後、魚の皿をわきに置く。

「俺にこんな冷めた魚を食わす気か」

じっと魚の皿を睨み付ける。

私はまた、立ちすくむ。

いったい誰が私の言うことを信じてくれるだろうか

誰かに話せば「そんなのどこにでもあることよ」「みんな我慢してるのよ」と言われます。

そうなんだろうか。私は我慢が足りないのだろうか。そう問い続けてきました。

そしてこの世に「モラル・ハラスメント」というものがあることを知りました。

私が幸せになれないのは私がわがままなわけでも努力が足りないわけではない。

夫にとってハラスメントの対象は誰でもよかった。自分より弱い人間だったら誰でもよかった・・・!!

夫の感情の犠牲者になるために選ばれたことを私は知りました。

日々の暮らしの中で、朝から晩までただオドオドと夫の顔色を伺いながら生きてきました。それは壮絶な果てることのない戦いでした。DVならば傷跡が残ります。法の中でも世の中にも認知されてきました。

ですがモラル・ハラスメントは他人の目に触れることはありません。家庭という狭い空間の中には、かつて神の前で死が二人を分かつまで、富めるときも貧しい時も病めるときも互いに慈しみあうことを誓ったはずの相手が、今は悪魔のように 自分の前で黒い言葉を吐き散らし、血も凍るような冷たい眼差しを向けます。

そして夫は一歩外に出れば温厚な人格者に早変わりします。

DVではない、でも性格の不一致で片付けられるようなものではない。それより何よりいったい普通の家庭の普通の夫婦はどんな会話をするのか、 それすらわからない。CMに出てくるような家族なんて嘘っぱちって、知ってる。

でも確かにいるのです。

「人を傷つけずにはいられない」人がいるのです。


私がサイトを立ち上げた理由

モラル・ハラスメントとは、精神的嫌がらせを言います。しかし私が受けたものはハラスメント(嫌がらせ)を 通り越してバイオレンス(暴力)といっていいものでした。一概に精神的暴力と言っても具体的に説明するのは難しいでしょう。

セクシャル・ハラスメントが市民権を得た今でも、その取り扱いにはまだ確固たる線引きができていません。なぜならハラスメントかどうかは受け取る側の問題であるからです。

端から見てハラスメントに見えたとしても、本人にその自覚がなければ成立しません。逆に本人がハラスメントを受けたと主張し、状況証拠があれば加害者が否定してもそれは成立します。

しかしそれが家庭で起こったら、どうやって証拠を出せばいいのでしょう。しかも相手は一生を共に送るはずの夫であり、子供の父親なのです。

モラル・ハラスメントは人間対人間の感情の狭間に介在する、実に巧妙な暴力です。

マリー=フランス・イルゴイエンヌさんによって記された「モラル・ハラスメント」 にある数多くの事例を読めば、多くの方が受けた覚えがあるでしょう。

どこでも、誰にでも受ける暴力。しかし、その暴力が家庭で起こり、四六時中夫からの精神的暴力にさらされたとき、妻や子はどういう行動をとり、どういう気持ちで毎日を過ごすのか。

あまりにも日常にあることだから見過ごされてきました。我慢が美徳と放置されてきました。

モラル・ハラスメントかどうかは程度の問題です。しかしその程度を計る尺度がありません。


でも、私は今大きな声で叫びたい。毎日夫の放つ一言に血の気が引き、一挙一動、目の動きにすら恐怖を覚え、足音におびえ、閉まるドアが立てる音で夫の機嫌を探る。 そんな生活が普通であるわけはありません。


このサイトにあるtaleに私の生活をのせました。ここまでひどくないと安心される方。これ以上だと思われる方。多くの方にモラル・ハラスメントを知っていただくために、 私はこのサイトを立ち上げました。

サイトを開くにあたり私が最も懸念したのは、同じような悩みを持つ人たちが「モラハラ夫について」を読み、 ある一点だけを取り上げて、「ウチと同じ、モラハラだ」と思ってしまうのではないかということでした。ちょっと機嫌が悪くなる、ちょっと意地悪してしまうくらいならば誰にでもどこにでもあることです。

私はこのサイトを「ウチのダンナは似てるけどちょっと違うかも」というような否定的な見方で読んでいただきたいと思っています。 私は訪れて下さった方が「ウチの夫はモラハラじゃなかった」「ちょっとストレスが溜まっていただけで治った」と言って、ここから卒業してくれることを心から願っています。

なお、このサイトを読んだことによって、あなたの生き方や考え方が変わり、そのために起こるどのような損害も当サイトは責を負わないものとします。自分の道は自分で選んで下さい。

おことわり

このサイトは被害者の立場から同じ被害者である方々への情報提供・共感を目的として運営いたしており、決して離婚を勧めるためのサイトではありません。自分が被害者であることに気づき、モラ夫との共生を望むならば、加害者の特性を知り、どうやったら自分の精神的ダメージを少なく できるか、また、離婚する時にはどうすればいいのかを共に研究するところです。

サイトを開いてから多くの方からメールをいただき、掲示板にも書き込みがありました。 その中でご自分の体験を綴り「これはモラハラでしょうか」と問われる方が大勢います。 私は精神科医でも心理学者でもカウンセラーでもありません。夫からのモラル・ハラスメントを受けていた一女性でしか ありません。ただいま非常に多忙を極めておりますので、個人的なご相談にのる時間の余裕がありません。「アドバイスを下さい」という メールをいただいた場合は、リファレンスとして相談機関を紹介することになります。いただくメールの数が非常に多いので、お返事まで10日前後かかる場合があります。

もしご自身がモラハラ被害者かもしれないと思ったら、ぜひ心療内科や精神科・女性センターの相談室など専門機関での 受診・相談を受けることをお勧めします。

モラハラリファレンスでは信頼のおける病院や相談所の紹介、モラハラ関係を主とした本の推薦をしております。 私はずっとモラル・ハラスメントについて調べてきました。調べれば調べるほどこれは奥の深い問題でした。最初の頃から比べると 私の考え方も変わってきています。これからも変わるかもしれません。そのためサイト内の文章を予告なく加筆・訂正することがありますのでご了承下さい。

また、このサイトは「同盟」というタイトルですが、あくまでも私ひとりが運営している個人サイトであり、団体ではありません。 ここに集まる方々はゲストとしておもてなしをいたします。ご意見、ご希望がありましたら、管理人までメールでご連絡下さい。

掲示板ご利用の際の注意

ここに集まるモラル・ハラスメント被害者は、心に大きな傷を負っています。本来ならば意見を交わす 掲示板ですが、誹謗中傷はもとより、傷ついている方に対して、更に追い討ちをかけるような言い回し などなさいませんようお願いいたします。必ずこちらを一読してからお入り下さい。