日本で初めてのモラハラ解説本「Ｑ＆Ａモラル・ハラスメント」が発売されたのは２００７年の暮れでした。それから約５年半、モラハラは当時と 大きく様変わりしました。モラハラは公には「精神的ＤＶ」と呼ばれ、「相談するときにはモラハラと言ってはいけない。精神的ＤＶと言うように」と ＢＢＳで何度も書き込まれました。モラル・ハラスメントという言葉では相手には通じない、へたをすると相手から反感を買うということで、モラハラと いう言葉はＮＧフレーズでした。ところが現在、モラル・ハラスメントは少なくとのＤＶに携わる人たちのほとんどがこの言葉を知っているようになりました。 むしろ「知らない人はモグリだよ」とさえ言われます（このモグリ相談員がまだいるのが現実ですが）。

昔からＤＶサポートにあたってきた人たちは、いかにモラハラが残虐で危険なものかよく知っていました。ですから平成１６年のＤＶ法改正の時には、 「心身に対して」と、体と並列に心への暴力もＤＶであると定義されたのです。

そしてモラハラは、一般社会へ静かに広がっていきました。なぜなら、外ではソフトな夫が、家に帰ると豹変して家族を虐める加害者で、「自分が悪いわけではない」と気づく人が沢山出てきたからです。 と同時に、自分の希望が通らなければ相手を「モラだモラだ」と言いつのる人も多く出てきました。

モラハラを「どなる」「無視をする」「大きな音をたてる」ことだと思っている人も多いのではないでしょうか。ほんのちょっとしたことでモラハラモラハラと騒ぎ立てられては本当の被害者が浮かばれません。 本当のモラハラとはいったいどういうことなのか、 ここでしっかりとしたモラハラ解説書が必要だと思いました。

今回の本では、調停や裁判のときの心のケアを取り上げています。それには調停や裁判とはなんぞやという説明が必要でした。従来からこのことは ＤＶマニュアル等に書かれてきましたが、掲示板で被害者が特によく質問する事項を取り上げ、ベテラン弁護士が明快に解説しています。 子どもへの心のケア、そして子どもへの性暴力被害も取り上げました。おそらくＤＶ解説本でこれを取り上げた本はほとんどないと思います。

この難しい課題について解説するためには、豊富な知識と経験が必要でした。その執筆陣をご紹介しましょう。

■数多くのＤＶ被害者のカウンセリングをしてきた本田りえ先生（武蔵野大学非常勤講師武蔵野大学心理臨床センター相談員）博士（学術））
■ずっと長い間ＤＶ問題に取り組み、常に被害者と同じ目線で取り組み事件を解決してきた露木肇子弁護士（「DVホットライン八王子」など、4つのDV被害者支援団体会員）
■モラハラ被害者同盟管理人

この３名が、渾身の力をこめ、今考えうる限りのモラハラ徹底解説を書き上げました。
そして日本のトラウマ治療では第一人者の小西聖子先生（武蔵野大学教授、精神科医）が、モラハラとはどのようなものなのか、 わかりやすく解説しています。

この本が、今モラハラで苦しんでいる方、どうしても納得できない方、どうしたらいいかわからない方。そんな方たちの心の灯火になりますよう 願ってやみません。