■モラハラ啓蒙報告■

ちょっと嬉しいご報告 投稿者:tommi 投稿日:2006年10月17日(火)
 弁護士です。かねてモラハラなどの問題に強い関心を持っており(実は私自身も先輩弁護士から(!)モラハラ被害を受けたことがあり)、ずっとROMしておりました。今日は、ぜひともご報告したくなり書き込みます。

 私は、離婚の相談において、相手方がモラハラ加害者と思われた場合には、当該事案に関する聴き取りの一環として、「こころのサポートセンター・ウィズ」の冊子のコピーを渡し、「ご主人に当てはまるところや思い当たるところに印を付けたり、気づいたことなどを自由に書き込んでください」とお願いしています。被害者にはたいへんしんどい作業ながら、みなさんしっかりこなしてくださいます。  

こうしてできた資料は、これまでは、あくまでも私が事情を把握するための材料とのみ位置づけ、裁判所に提出するのは控えていました。が、最近、あまりにも「ぴったり」で「わかりやすい」教科書的モラ夫を相手方とする事件について、調停の申立書と一緒に、家裁に参考資料として提出しました。
 
それで今日、この事件の担当書記官と事務的な電話連絡をしたところ、その際この書記官が「ところで先生、このモラルハラスメントという資料(上記ウィズの冊子のコピー)、とても興味深いですね。私も今後のため参考にしたいので、コピーを取らせていただいてもよろしいでしょうか」とおっしゃるのです(^^)  もちろん、即座に「どうぞどうぞ!どんどん広めてください!」と言っておきました。これは厳密には著作権の問題がありうるのでしょうが(不勉強ゆえ正確なところはわかりませんが)、許してくださいますよね、ウィズさん・・・(^^)
 
もともと、この書記官さんは別件で何度かお世話になっており、たいへん真面目で仕事も丁寧で、好感を持っておりました(先方さんとしては単に「ウルサイおばちゃんだから取扱い注意」とか思ってただけかもしれませんが(^^ゞ)
 ともあれ、当方は大規模庁です。ここで、熱心な書記官がひとり(いや、他にも関心を持った同僚がいるようなこともいってたような気がします)、こうしてこの問題に関心を持ってくれました。
 
書記官というのはいわば裁判官の秘書役であり、事件の中身に関わることは基本的にはありません。  それでも、この人を通じて、裁判官を始め、裁判所全体に問題意識がひろがっていくことが大いに期待されます。小さな一歩かもしれないけれど、心強い一歩だと感じます。
 
すでに、地裁の労働事件を扱う部では、最近になっていくつかのモラハラ(パワハラ)関係訴訟が次々と提起された結果、この概念の理解が浸透しつつあるのかなあ、裁判官もちょっとは勉強してくれたみたいだなあ、というような手応えを、少しばかり感じることがあります。  まだまだ裁判所だって捨てたものじゃない。久しぶりにそう感じてちょっと嬉しくなった次第です。




投稿者:大ママ@fix 投稿日:2006年10月18日 (水)
はじめまして。管理人です。
ここに集まるモラハラ被害者の多くは、調停や裁判のまっただ中、またはその準備をしています。その際によく話題になるのが、法曹界の方たちがモラハラについてあまりご存じないため、論点がズレてしまうことです。
私としては離婚できる理由
浮気などの不貞行為があったとき。
3年以上に渡り、生死が不明のままのとき。
回復の見込みのない強度の精神病の場合。
の他の部分に「精神的虐待があったとき」の一文を加えて欲しいと思っています。現在はDVがある場合も加わっていると思いますが、これは「身体的暴力」のみを指すととらえられているかと思います。精神的暴力は「性格の不一致」として扱われているのではないでしょうか。

「性格の不一致」では何か被害者の我慢できない・わがままのように思われてしまいます。 法律の最前線に立たれて被害者救済にあたってくださる弁護士の方に、モラハラを理解して下さる方は今は少ないですが、先生のように率先してモラハラを研究し、実践の場に提示して下さることは本当にありがたいことだと思います。

きちんと知らなければ、どちらが嘘をついているかがわからないというのがモラハラの特徴ですので、勉強して下さる書記官の方も増えて欲しいなと思います(できれば裁判所で研修して欲しいです) わざわざ書き込みありがとうございました。先生のご厚意に感謝いたします。

投稿者:free flower 投稿日:2006年10月19日 (木)
tommi弁護士様
うれしいご報告、本当にどうもありがとうございます。
法曹界の先生方のご理解が得られなければ、被害者の救済は成り立ちません。 モラハラは、巧妙な手口で被害者に罪悪感をうえつけ、人格を崩壊させ、人生までも狂わせることのできる、目に見えない『最大の暴力』だと思っております。 加害者(加害者は自分を被害者だと思っているらしいとのことですが・・・)平気で他者に責任転嫁することができ、平気で自分に都合のいいように真実を歪めて伝えるため、第三者からは、とてもわかりにくいのが問題です。

また、首都圏よりも地方在住の方々が理解が得られることが少なく、悩み苦しんでいる方々が大勢いらっしゃるように思います。 どんなに説明しても法曹界の方々に理解してもらえず、適切な判断を下せる医療機関も少ないように見えます。 そのため、Webでしか援助を求められないというのが現状だと思います。
どうか、地域格差なく早急にモラハラがご理解いただけることを願っております。
法律には詳しくないので、不適切かもしれませんが・・・ なぜかモラハラに関連があるように思えましたので、下記のサイトから抜粋いたしました。 すべての人々が幸せになれますように。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2006_2.html
2.個人の尊厳原理(憲法13条)と生存権
本来、生存権保障の究極の目的は、個人が人格的に自律した存在として主体的に自らの生を追求できるという自由の確保にあるはずである。そして、人一般の権利としての人権の根拠が、今日においては、「個人の尊厳」という思想に求められ、それは、社会あるいは国家という人間の集団を構成するための原理として、個人に価値の根源を置くもので、集団(全体)を個人(部分)の福利を実現するための手段とみる個人主義の思想なのである。日本国憲法は、13条前段で「すべて国民は、個人として尊重される」と謳い、24条において「個人の尊厳」を掲げているとおり、まさに、個人主義に立つことを宣言している。そして、この個人主義においては、個々人は自己にとっての「善き生」を自律的に選択して実践していく主体とされ、社会は個々の構成員すべてにかような生き方を承認し助けるものと想定されている。 したがって、憲法25条の生存権の基底には、憲法13条前段の個人の尊厳原理が存在するのである。

3. 幸福追求権の尊重
日本国憲法13条後段は、前段の個人の尊厳原理に続けて、「生命、自由及び幸福追求に対する・・・権利」(「幸福追求権」)を規定するが、この幸福追求権は、個人が自律的生を生きるのに不可欠の権利と位置づけられているものであり、これこそが憲法が保障するすべての基本的人権の源泉をなす。そして、憲法は、幸福追求権について、「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定しているのであり、これがすなわち個人を「個人として尊重」するということの具体的意味にほかならない。

投稿者:tommi 投稿日:2006年10月19日 (木)
管理人さん、free flowerさん、ご丁寧にありがとうございます。
 ご指摘のとおり、「精神的虐待」についての具体的な理解がまだまだ不十分であることを痛感します。  かつて、「セクハラ」が「よくないこと」であると抽象的には認識できても、それが「具体的にどんな言動を指すのか」「何が問題なのか」についての理解が、一向に進みませんでした(現在も充分とは言いがたいですが)。  「精神的虐待」についても、これと同様の状況にあるように思います。
   
もとより、抽象的には、いわゆるDVなどど並ぶ離婚原因(「婚姻を継続しがたい重大な事由」の1つ)としての位置づけは定着しています。  このことは、現在、家裁で用意している統一的な離婚調停の申立書に、「申立の背景」として、「性格が合わない」「性的不調和(いわゆるセックスレスなど)」「酒を飲み過ぎる」「家族と折り合いが悪い」などと並んで、「精神的に虐待する」という項目が列挙されていることからもわかります。04年に女性から申し立てられた離婚調停の1/4以上で、この「精神的虐待」の項目があげられていたとの統計もあるようですね。  ついでながら、裁判上の離婚原因は正確には以下のように規定されています。

1,配偶者に不貞な行為があったとき。
2,配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3,配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4,配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5,その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

 以上のとおり、「暴力」や「虐待」という文言はありません。
 これらは、あくまでも5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」の解釈=ひとつの具体例に過ぎないのです。そのほか、上記にも挙げたお酒や金銭問題、もちろん「性格不一致」(現在、管理人さんご指摘の問題意識をも踏まえ、裁判所でも性格「不調和」という表現を用いることが多いです)もなにもかも、全部5号の解釈として導き出される具体的中身(一例)であって、DVなどが、それ自体独立の離婚原因として、法律に規定されているわけではないのです。「精神的虐待」についても同様です。  

つまり、離婚原因は、不貞などいくつかあげられていながら、現実にはほとんどが解釈に委ねられているわけです。  

「行列のできる法律相談所」というテレビ番組を見ていると、頻繁に「このケースでは離婚できるか(離婚請求が認められるか)」というテーマが議論されていますね。
 あれは、実際には、だいたいがこの5号「婚姻を継続しがたい重大な事由」に、そのケースが該当するかどうかを議論しているのです。  で、4名の弁護士が4様のことを言っている。当然結論も分かれます。結局のところ、それぞれの価値観や資質です。  

これは裁判官も同じで、同じような事案でも、裁判官の資質や価値観によって結論が左右されてしまう。私たちの離婚法は、そういう危険のある制度なんですね。  この点の問題意識を、このサイトでも紹介されている『ケース研究』286号や『ジュリスト』1301号において、水野紀子教授が論じておられるわけですが、私も大いに賛同するところです。

水野教授もがいみじくも「裁判官の価値観の歪み」というような表現を論文中に用いておられるとおり、裁判官という人種をみていると、人の痛みのわからない、想像力に乏しい人が多いです(弁護士ももとより強く自戒すべきところですが)。  たとえば、一定期間の別居など一定の「わかりやすい」客観的事実が存在すれば裁判所は離婚請求を認めなければならない、というような法律であれば、どんなにアホな裁判官にあたっても、モラハラ被害者は(少なくとも離婚請求に関しては)安心ですよね。そのような制度が望まれます。  

ともあれ、現に克服すべき問題は、私たち法曹関係者が、モラルハラスメントということについて、きちんと理解し、問題を明確に意識すること。せめて今のセクハラ程度には、知ってほしいものですね。  そのためには、裁判所に向けて、どんどん情報やメッセージを発信していくことだと思います。
 
その意味で、現在調停や裁判をされているみなさんには、ぜひともがんばって、粘り強く裁判所に伝え続けていただきたいと思います。何のサポートもできず、無責任に「がんばれ」というのはとても心苦しいけれど。いつもここで蔭ながら応援しています。  もちろん、私も、どんどん裁判所に伝え続けます。

投稿者:free flower 投稿日:2006年10月22日 (日)
上記に、ご紹介いたしましたサイトのTOPページです。
<日本弁護士連合会>
http://www.nichibenren.or.jp/
また、サイト内の関連リンク先には以下のようなページがございましたので、ご参考までにと思いご紹介させて頂きます。 どうぞ、宜しくお願い致します。 <財団法人 法律扶助協会>
http://www.jlaa.or.jp/index.html
<裁判所>
http://www.courts.go.jp/

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